これらの向上は、互いに影響し合い相乗効果を生む。より優れたハードによって、エンジニアはより優れたアルゴリズムの実験と開発がしやすくなる。当然ながら機械も、妥当な時間内で、はるかに大量のデータ群を処理できるようになる。今日実現しているアプリケーションの一部、たとえば声の音波を意味の通るテキストに変換する作業などは、1990年代の古いハードでは、文字通り何世紀もかかるはずだ。

 成果が上がれば上がるほど、より多くの有能な研究者がこの分野に進もうという意欲を持つ。そして投資家と企業幹部にとっても、さらなる取り組みに資金を投じる動機となる。

 この相乗効果は、さらに別の2つのテクノロジーによって、いっそう増幅されている。グローバルなネットワーキングと、クラウドだ。モバイルインターネットはいまや、地球上のほぼすべての場所にデジタル技術を提供でき、数十億人もの潜在顧客にAIの飛躍的発展をもたらすようになっている。

 次のような例を考えてみるとよい。読者の皆さんがスマートフォンですでに使っているであろう、スマートアシスタント。大企業が現在グローバル規模で共有している、デジタルの知識基盤。ウィキペディアやカグルのような、クラウドソーシングのシステム。その主たるユーザーと貢献者は、あなたの組織の外にいる聡明な人々だ。

 そして、おそらくもっと重要なのは、クラウド型AIとロボティクスに宿る、学習と拡散を加速させる潜在能力だろう。

 ある場所に設置された一つのロボットが、特定の作業、たとえば物体の識別に取り組んでいるとしよう。その作業を無事に習得したあかつきには、ロボットは得た知識をクラウドにアップできるようになり、共通の知識表現システムを使っている他のロボットたちと共有できる(リシンク・ロボティクスは、こうしたプラットフォームの構築に取り組む1社だ)。

 この方法によって、ロボットたちはそれぞれ別々に稼働しながら、数百、数千、やがては数百万の目と耳から効果的にデータを収集できるようになる。それらの情報を単一のシステム上で組み合わせることで、ロボットははるかに迅速に学習でき、ほとんど瞬時にインサイトを共有できるのだ。


HBR.org原文:What's Driving the Machine Learning Explosion? July 18, 2017.

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エリック・ブリニョルフソン(Erik Brynjolfsson)
マサチューセッツ工科大学(MIT)スーロン・スクール・オブ・マネジメントのシュセル・ファミリー記念経営科学講座教授。MITデジタルエコノミー・イニシアティブのディレクター。全米経済研究所(NBER)の研究員も務める。アンドリュー・マカフィーとの共著に『プラットフォームの経済学』(2018年、邦訳日経BP)『ザ・セカンド・マシン・エイジ』(2015年、邦訳日経BP)などがある。

アンドリュー・マカフィー(Andrew McAfee)
マサチューセッツ工科大学(MIT)スーロン・スクール・オブ・マネジメントの主席研究員。MITデジタルエコノミー・イニシアティブの共同創立者兼ディレクター。デジタル技術がビジネス、経済、および社会をどのように変えつつあるかを研究している。