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意思決定の精度を高めるうえで、データに基づく判断は極めて重要である。しかし、過去の実績が当てにならないときや、そもそも有用なデータを取得できないときは、どうだろうか。情報収集に時間をかけた結果、決断をどんどん先送りして、状況を悪化させることは珍しくない。筆者は、ベンチャー投資などの例を挙げながら、特に不確実な環境において、直感に頼った意思決定は効果を発揮すると主張する。


 経営幹部の中には、勘の強さを自慢にしている人がいる。長年の経験によって磨かれ、何かを決断する際の指針にしている。その一方で、直観には偏見や感情が関係しているので、重要な局面で当てにしてよいものかを迷う、という人もいる。後者は、直感をきちんとしたデータや分析で「チェック」すべきだという、よくあるアドバイスに影響されているに違いない。

 さて、どちらが正しいのだろうか。リーダーは、勘に基づいて意思決定を行う「べき」なのか、そうではないのか。

 私が行った最近の調査は、直感が実際に役立つことを示している。データをこれ以上収集分析しても意味がないという非常に不確定な状況において、特に有効である。

 救急救命室で外科医が下す生死に関わる決断や、アーリーステージ企業の投資家による投資配分の判断など、重大な決断に関して、私がこの8年間で行ってきた複数の研究によれば、直感は、特にリスクの高い決断を迫られた人に、思い切って決断を下させるのに一役買っていた。

 氾濫する情報、高まるリスクや不確実性、失敗できないという重圧を前にして二の足を踏み、決断を先送りしてしまうことはよくある。そんな状況でも、リーダーたちは自分の勘を信じることで、前に踏み出す自由を得ているのだ。

 例を挙げると、私は、エンジェル投資家やベンチャーキャピタリストを数百名観察し、彼らがどれだけ経済・財務のハードデータを検討し、直観的な「成文化されていない」情報に基づく予感や小さなサインにどれだけ頼って投資先を判断しているかを、4つの調査(こちらこちらの論文2稿にまとめた)を通じて追跡した。財務諸表やマーケットデータなどの客観的かつ定量的な情報に基づけば、検討対象となったほぼすべてのベンチャー企業が、投資を回避すべき高リスクな企業だった。それでも投資家たちは、みずからの勘に従って投資を決めていた。

 私は、投資家たちが投資先として目をつけた90社を追跡し、彼らが企業の成功を直感的に予測できていたかどうかを、数年後に確認することができた。この研究や私の他の研究から、勘に基づく決断が奏功した人は、次のことをやっていると判明した。

・勘が独立した情報ではなく、既存の主観的情報と客観的情報の両方を活用していることを認識している。
・勘が瞬間的、衝動的、感情的なものではなく、むしろ洗練され、ニュアンスに富み、経験に基づいていることを理解している。
・勘を磨く努力をしている。自分のフィールドの模範、原型、パターン、モデルなどに注意を向け、その学びを将来の決断に結びつけている。