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地震や洪水のような自然災害が社会にもたらす脅威は、あまりに大きい。その一つとして、不動産投資に与える影響を無視することはできない。自然災害のリスクを軽視していたら、第2のサブプライムショックを招くという指摘もある。個人も企業も政府も、気候変動による災害は起きるものだと認識を改め、事前に対処する必要がある。筆者はそのための具体策として、補強、再建、再開、規制、そして撤退を挙げる。


 森林火災や洪水、干ばつが住宅やビジネスにもたらす脅威が大きくなるなか、自然災害リスクは金融リスクになりつつある。

 全米経済研究所(NBER)が9月に発表した研究論文によると、連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)が、金融機関から買い取る、危険地区に立つ家の住宅ローン債権が増えている。これはマイホーム購入者も投資家も、潜在的な自然災害のコストをきちんと計算してこなかったこと、そして政府がその見落としを可能にしてきたことを示唆している。

 こうした市場の欠陥は、サブプライムローンの大量焦げ付きによって起きた、2008年の金融融危機の再来を招く恐れがあると警告する声もある。

 無謀な不動産投資をしているのは、消費者だけではない。多くの企業も、工場など新たな設備投資を行う場所を決めるとき、あるいは、かつては安全だったけれど、現在は自然災害リスクが高くなった場所にある資産の処分方法を決めるとき、目先のことばかり考える傾向がある。

 世界では温暖化対策が進められているとはいえ、気候変動が不可逆的なレベルに達していることは、もはや周知の事実であり、私たちはそれを受け入れ、考え方を改める必要がある。いつまでも砂袋を積み、ポンプで地下室の水を排出し、炎に放水し、政府の救済を待っているだけではいけないのだ。マイホーム所有者と企業、住宅ローン債権保有者、そして政府、つまりは社会全体が、どの資産を補強し、どのような対策が可能かを考える必要がある。

 それなのに私たちは、正反対のことをしているようだ。

 フロリダ州バージニア州など海に面した州では、海面上昇による住宅浸水をカバーする民間保険は事実上存在せず、住民は全米洪水保険制度(NFIP)など政府系保険に頼るしかない。

 状況をさらに悪化させているのは、こうした土地にも建築規制がほぼ存在しないことだ。個人の自由を重視する米国社会では、最低限の建築ルールと用途規制さえクリアしていれば、誰が何を自分の土地に立てようと自由であるべきだと考えられている。このため、危険な氾濫原や沿岸の低地、あるいは森林火災の起きやすいエリアに家を建てる人は増える一方だ。

 なぜ、このような機能不全が起きているのか。これは住宅ローン、保険、土地開発という3つの要因が、未来ではなく過去、すなわち貸し倒れ履歴、保険金請求履歴、そして洪水や火事の履歴に基づき構築されることと関係している。

 たしかに、それは合理的だ。経験的なデータからわかることは多い。それを未来の予測に基づく決定方法に変えれば、思惑という問題が生じる。それに市場には、住宅価格を高く維持しておくべきインセンティブがたっぷりある。しかし、異常気象(とその余波)は急速に拡大しており、過去の履歴に基づく考え方は現実に対応できないように見える。

 だが、もっといい方法がある。筆者をはじめとする複数の専門家の研究では、レジリエンスに投資する方法は基本的に5つある。補強、再建、再開、規制、そして撤退だ。この5つは、自然災害リスクにさらされている資産をどのように処分すべきかを決める際、有効なツールになる。