●評価指標から逆算して考える

 昇給、昇進、勤務評定について社内で確立された指標がある場合は、それを詳しく分析してみよう。社員が好ましい成績を上げるためには、どのようなステップを経る必要があるのか。どのようなスキルや知識や経験が必要なのか。この分析をもとに、必要な資源にすべての社員が平等にアクセスできているかを検討しよう。

 ●キャリアの「高速車線」への入り口に留意する

 職種によっては、初期の評価次第で、将来どのような機会を得られるかが決まる。そのようなケースでは、初期にチャンスが平等に分配されているか――言い換えれば、いわば高速車線に乗るチャンスを誰もが等しく与えられているか――を精査しよう。

 さらには、一部の社員だけが高速車線への入り口を利用で切る状況にないかも注意すべきだ。たとえば、マネジャーが「スーパースター社員」になれそうだと思う人物にだけ目をかけていないか、苦戦している社員が能力を証明できるように十分なチャンスを与えているかも調べる必要がある。

 ●社員の意見聴取やケーススタディを行う

 社員(とその上司)の言葉も有益な情報源になりうる。座談会形式の意見聴取の場を設けるなどして話を聞けば、自分が大きなチャンスを得た半面、ほかの社員が同様のチャンスを得られなかったケースを教えてくれるかもしれない。

 また、将来を嘱望されていた社員のキャリアが、軌道をはずれてしまった実例に関する情報も役に立つ可能性がある。具体的には、退社する社員に話を聞いたり、差別に関する過去の苦情申し立てを検討したりすればよいだろう。

 ●陰の意思決定者を明らかにする

 社員に希少なチャンスを分配する人物について、十分な関心が払われていない場合がある。企業法務を扱う法律事務所では、若手弁護士への仕事の割り振りで重要な役割を果たすのは、中級レベルもしくは上級レベルのアソシエート(雇用されている弁護士)たちだったりする。ところが、パートナー(共同経営者)の地位にある弁護士と異なり、アソシエートたちはマネジメントの訓練をほとんど受けておらず、意思決定の内容が精査されることもない。

 ●無意識の意思決定に光を当てる

 重要な意思決定が無造作に行われている場合もある。マネジャーはときとして自覚なしに、自分と似た面がある社員や、過去に成功した人と似た社員にチャンスを与える。しかも、その結果としてほかの社員のチャンスが奪われていることに、気づいてすらいない。

 ●社員がキャリアを切り開くのを助ける

 どのような機会がキャリア形成で大きな意味を持つかを社員自身が知らないために、不平等が生まれたり、悪化したりする場合もある。家族ではじめて大学に進学し、卒業して投資銀行に就職したばかりの新入社員は、両親がいずれも金融関係者の同僚に負けないために何を重んじるべきか知っておいたほうがよい。新入社員が自力で気づくのを待つのではなく、5~10年以内に何を達成すべきかについて、明確な指針を示そう。

 ●主観的な意思決定の厳密性を高める

 主観的な判断は、無意識のバイアスに影響されやすい。時間がない状況や曖昧な状況での決定にも同じことが言える。マネジャーたちが自分なりの客観的な判断基準を――目に見える行動に基づいた基準を――確立し、それに準拠して、部下に仕事を割り振ったり、失敗を許したり、能力を評価したりするよう促そう。

 ●データを示す

 行き当たりばったりで判断を下しているマネジャーは、自分の意思決定の積み重ねがどのような影響を生んでいるかに、気づいていない可能性がある。新しい得意先を割り振られるか否かで、その後の昇進が左右されるとしよう。そのようなケースでは、どの社員が新しい得意先を任されているかをマネジャーに定期的に通知すればよい。そうすれば、マネジャーはバランスを失わないように留意できる。

 ●社員にリソースを提供する

 マネジャー自身は、もっと多くの社員に重要なチャンスを与えたいと思っていても、時間とエネルギーの余裕がない場合もある。そこで、人事部門の出番になる。社員に事業開発のトレーニングを施す必要があるのなら、マネジャーが部下を随時指導するのに任せるのではなく、希望する全社員を対象に研修を実施しよう。

 ビジネス上の難題はすべてそうだが、職場のバイアスに対処するためには、良質なデータ、現場の主体的な関わり、それに、新しいアイデアに基づく問題解決策が不可欠だ。そして、自社の人事制度における「危うい意思決定の機会」を洗い出すことにより、すべての社員が能力を存分に開花する後押しができる。


HBR.org原文:10 Ways to Mitigate Bias in Your Company's Decision Making, October 21, 2019.

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エリザベス C. ティペット(Elizabeth C. Tippet)
オレゴン大学ロースクール准教授。研究テーマは雇用慣行と企業倫理。