組織文化に関するサインは、女性を引きつけるか遠ざけるかを大きく左右する。

 企業サイトの「ダイバーシティとインクルージョン」のページ以外にも、サインは潜んでいる。採用候補や社員は、入社する(または会社にとどまる)かどうかを決める際、意識的に、または無意識的に、次のサインに目を光らせ、自分が活躍できる職場文化かどうかを吟味している。

 ●リーダー層の女性および有色人種の数

 企業のリーダー層を見て、性別や人種、年齢的に、自分と似た人がいるかどうかをチェックする人は多い。リーダー層にダイバーシティが見られないということは、昇進基準が公平でないサインである場合が多い。エントリーレベルの女性社員を多く採用している企業ならば、なおさらだ。職場の隠れたバイアスを知るには、手始めとしてこちらを参考に診断し、ブロックするとよいだろう。

 ●求人の閉鎖的表現

 求人を見た人は、そこに企業の価値基準がにじみ出ることを、直観的に理解している。「忍者プログラマー」や「問題と格闘する」のように、男性、戦闘、攻撃性をイメージさせる言葉が使われている求人は、女性から嫌厭される場合が多い。やる気、アイデア、問題解決能力に溢れている社員のことは、「結果を出す」「協働を通じて問題を解決する」といった表現を使うと、男性にも女性にも共感されやすい。

 ●成長機会

 男性は将来性があれば昇進するのに対し、女性は実力(すなわち同様の部署で同じ仕事をした経験)を示して初めて採用・昇進される場合が多い。現に、「隠れた成功の型」に当てはまらない候補者は、人一倍頑張らなければ、同等の能力があると認められない場合が多い。その結果、応募者は、能力を伸ばす機会を与えてくれる会社であるサインを探そうとするのだ。

 スタンフォード大学クレイマン・インスティテュート・フォー・ジェンダー・リサーチの元フェロー、フィオナ・リーによる実験的調査では、「職場における従業員学習体験」を強調した求人のほうが、「社員の能力を発揮できる豊富な機会」などを謳う、特定の能力を重視する求人よりも、女性の応募者を増やせることがわかった。別の調査は、中堅の女性(および男性)技術者が、福利厚生よりも技術的なスキルの向上を重視していることを示している。社員を大切に育てる社風を発信する企業は、女性の応募者や勤続者を増やせる可能性が高い。

 こうした戦略を実行すると、資格条件を満たさない応募者が殺到するリスクを心配する企業もあるかもしれない。「応募者をふるいにかけるのに、余計に時間をかけてどうする」と。裏を返せばこう言えないだろうか。「優秀な人材に応募を思いとどまらせてどうする」

 ●人材育成とメンター制度

 私たちがインタビューした中の一人、証券大手チャールズ・シュワブの上級副社長を務めるメアリー・ロザイは、月に一度の女性社員のランチ会に参加を依頼されたとき、なぜ女性だけで集まる必要があるのか疑問に思ったという。ところがしばらくすると、その会の価値に気づいた。女性たちは、キャリアアップの知恵をシェアし、壁にぶつかったときに助け合っていた。

 ロザイは、ランチ会に大きな価値を見出したため、女性幹部候補の採用面接でそのことに触れ始めた。女性たちはそのような会が存在することに驚き、勇気づけられていた。そこでロザイは、役員候補者向けの「ミニMBA」などシュワブで実施されている同様の人材育成制度や、女性社員ネットワークなど何十もあるERG(社員グループ)についても伝えるようになった。

 これらの人材育成やメンター制度について話すと、女性候補者から必ずと言っていいほど手応えがあったという。シュワブに引きつけられたのは、女性だけではなかった。ある入社したばかりの男性社員からは、前の会社で学習機会に飢えていたため、ロザイから聞かされた育成制度がシュワブを選んだ理由だと明かされた。

 ロザイは、優秀な女性人材を呼び込むには、キャリア機会や健全な報酬制度と同じくらい、人材育成に力を入れるシュワブの社風について発信することが重要だと気づいた。

 採用の過程で企業が発するサインを注意深く見直し、自社の組織文化の中で、どのジェンダーの人にもアピールする可能性が最も高い部分を見つけ、それを強調する。それができたら、自社の組織文化――と発信するサイン――が広く共感を呼び、大勢の中で際立つような持続的な変化が生まれるはずだ。


HBR.org原文:If Women Don't Apply to Your Company, This Is Probably Why, October 17, 2019.

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ロリ・マッケンジー(Lori Mackenzie)
スタンフォード大学ヴイエムウェア・ウィメンズ・リーダーシップ・イノベーション・ラボ共同創設者。スタンフォード大学経営大学院でダイバーシティ・エクイティ・インクルージョンを推進するリード・ストラテジスト。

アリソン・ウィン(Alison Wynn)
スタンフォード大学ヴイエムウェア・ウィメンズ・リーダーシップ・イノベーション・ラボ研究員。

シェリー J. コレル(Shelley J. Correll)
スタンフォード大学ウィメンズ・リーダーシップ寄附研究部門教授。スタンフォード大学ヴイエムウェア・ウィメンズ・リーダーシップ・イノベーション・ラボのディレクター。