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不確実性が極めて高いVUCAの時代、企業にはイノベーションがいっそう求められている。マネジャーは、それを実現できる人材を確保しようと躍起だ。では、変革を起こす人材とは、どのような特性を持っているのか。筆者らの調査によると、イノベーションを促進する力を養うよりも、イノベーションを阻害する5つの行動特性を克服するほうが効果を発揮することがわかった。


 米国は2018年、ブルームバーグの「最も革新的な国」ランキングで初めてトップ10から外れた。

 とはいえ、これは必ずしも、起業家精神の終焉を示唆するものではない。私たちを取り巻く、予測不可能性に満ち混沌とした環境が反映されているのだ。このような環境はしばしばVUCAと呼ばれる。激しい変動(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)に満ちている状況だ。

 人々はかつてなく多くの知識とデータを手にしているが、ビジネス・アナリティクスと業績評価指標を充実させるだけでは、トップ企業となるには十分ではない。国際市場で確固たる競争力を保つためには、企業は次のようなリーダーを起用しなくてはならない。感情的知性が高く、先を見越す洞察力があり、部下とうまく協働する方法、および変化への素早い適応を促進する方法を実践できる人材である。

 企業の間でこの認識が広がるなか、従業員の起業家マインドの養成に取り組むマネジャーが増えている。多くのリーダーは人材選考において、起業家精神に関連する(と自分が考えている)特性、たとえば創造性や臨機応変さなどを示す人材を採用したがる、という生来の傾向がある。

 しかし筆者らの調査によれば、マネジャーは人材選考とコーチングにおいて、「阻害要因(derailers)」に注目することのほうがはるかに重要なのだ。これは筆者ら研究チームが41人の起業家を対象に、生産的および非生産的な行動特性を検証し、統計学者による第三者評価で統計的有意性を認められたものである。

 ここでいう阻害要因とは、イノベーションの妨げとなる行動特性である。これらは、多くの人が幼少期に身につけ、成人後も脱却できていない、不健全な対処メカニズムに起因するものと筆者らは考えている。そして、阻害要因は気づきにくい。人は失敗への恐れから、往々にしてこれらへの対処を避けるからだ。

 しかし、自分の中にある阻害要因を特定する努力をしなければ、それらは時とともに、自分の能力を少しずつ削り取っていくのだ。

 調査で明らかになった、最も有害かつ一般的な阻害要因は以下である。

・無意識の怠慢:不注意と衝動性が目立つ傾向。仕事を完了していないのに提出してしまう、拙速な反応によって思いやりに欠けるという印象を与えてしまう、など。

・過剰な防衛:アイデアが盗まれることを恐れるあまり、自分の最も優れた仕事を手の内にとどめ、成果を他者と共有したがらない。

・過剰な自信:自分の自尊心と意思力を頼みとし、他者の助けが必要なときでも頼らない。

・過剰な努力:限度を超えて自分を追い込む。

・不当な評価:「成功して当然」という態度。その成功をもたらした人間関係やリソースを正当に評価せず、「次の新しい何か」を追求する衝動にばかり駆られている。

 これらは程度が小さければ、さほど目立たない。しかし、リーダーがこうした振る舞いを頻繁に、みずから示したり助長したりする場合、その影響は雪崩のように大きくなりかねない

 筆者らの調査によれば、阻害要因はえてして、個人レベルでの失敗を招くものだ(優れた資質をどれほど多く持っている人でも、例外はない)。だが対処せぬまま放っておくと、やがてチーム全体のパフォーマンスに影響するようになる。

 とはいえ、従業員の間にイノベーションと起業家マインドを促進するために、阻害要因を緩和する方法はある。