筆者らの一人は先頃、あるフィンテックのスタートアップにコンサルティングを提供するなかで、このやり方を試してみた。この会社は、自社の個人間支払いサービスを利用した人にキャッシュバックを提供する。

 グーグルやフェイスブックなどの有料メディア広告を使って顧客を獲得するコストは、あまりに高くつく。同社は支出超過を避けるために、既存ユーザーから友人に、このサービスを紹介してもらおうと試みた。その方法として、自社のウェブサイトとアプリの随所に紹介リンクを貼った。ところがユーザーはほとんどの場面で、このサービスを他者に伝えることに関心を持たなかった。

 そこで、我々はまず、カスタマー・バリューチェーンの典型例を綿密に作成してから、主な活動それぞれの後で、満足度を測定した。

 ユーザーは、サインアップの直後には顕著な満足を示さなかった。新しいアカウントを資金源に紐づけた後も、やはり満足・不満のどちらでもない。誰かにオンライン送金をした後は、使用開始時に比べて少し満足度は上がったが、格段に高いわけではない。

 しかし、知人からの送金を受領したとき、そして決済のキャッシュバック分が入金されたとき、満足度は跳ね上がった。これほど迅速かつ簡単にお金を受け取るという体験によって、「ワォ!(驚き)」の瞬間が生まれるわけだ。

 この学びを踏まえて、筆者はこう助言した。ユーザーに他者への紹介を依頼するのは、彼らが現金の入金を通知された直後がよい、と。この単純な変更によって、同社を知人に紹介した顧客の人数は119%増えた。結果、同社の顧客獲得コストは飛躍的に下がったのである。

 この方法でクチコミによる紹介を促すことは、我々が試したすべての企業でうまくいくことが判明した。ワォ!の瞬間は、友人への推奨を依頼する最適な瞬間でもあるということだ。

 企業はさらに、カスタマー・バリューチェーンのどの場面で、顧客満足度が最も低いのかを学ぶ必要もある。当然ながら、その場面の直後に自社の推奨を依頼するのは禁物だ。学びをもとに、要改善部分や、他のプレーヤーに奪われる(つまりデカップリングされる)リスクがある活動部分を、正確に突きとめよう(デカップリングとは、企業が他社のカスタマー・バリューチェーンにおける活動間の連携を分断し、特定の活動を奪って自社のものにするプロセス)。

 パブリック・ホテルの場合、弱点は予約であった。頻繁に旅行する人は、部屋の検索と選択肢の比較に伴う不透明さと複雑さを嫌い、複数の個人情報を求められることにうんざりしている。これが一因で、ホテルズドットコムやホテルトゥナイト(最近エアビーアンドビーが買収)を含む少数のホテル予約サイトが成長し、米国のミレニアル世代における全ホテル予約の半分以上を占めるに至っているのだ。これらのサイトはシンプルで、透明性が高く、個人情報を毎回入力する必要がない。

 自社のカスタマー・バリューチェーンで複数の活動を提供している企業は、各活動の後に顧客満足度を測定すべきである(顧客の「アンケート疲れ」を防ぐために、調査対象は顧客群の一部のみをランダムに選ぶとよい)。それによってワォ!の瞬間を特定でき、自社のメリットにつなげることができる。のみならず、弱い部分を見つけて強化できるのだ。


HBR.org原文:How to Improve Your Company's Net Promoter Score, October 02, 2019.

■こちらの記事もおすすめします
顧客満足度より「感情的つながり」を重視せよ
あなたの会社にも最高体験責任者(CXO)が必要だ
DHBR2016年6月号「顧客体験」はプロダクトに勝る

 

タレス S. テイシェイラ(Thales S. Teixeira)
デジタルによる破壊とトランスフォーメーションを支援するコンサルティング会社、デカップリングの共同創業者。前職はハーバード・ビジネス・スクール教授を10年間務めた。著書にUnlocking the Customer Value Chain(未訳)がある。

ヘナート・メンデス(Renato Mendes)
ブラジルの高等教育研究機関Insper(インスペア)の教授。オーガニカの創業パートナー。共著にChange or Die(未訳)がある。