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他人との競争に勝ち続けたいと思うのは当然だろう。そして、さまざまな研究が、キャリア初期で成功を収めることで評価や名声が高まり、さらに成功しやすくなることを示している。だが、筆者らが1000人以上の若手科学者を対象に調査を実施したところ、助成金獲得の戦いで辛勝を経験した人と惜敗を経験した人を比較した場合、後者のほうが将来、より大きな影響力を発揮するという事実が示された。


 いま、あなたがライバルと接戦を繰り広げているとしよう。大物投資家から自社への出資を引き出したり、誰もが憧れる職への就職を目指したりする状況を思い浮かべてほしい。

 あなたは、2つの結果の好きなほうを選べるとする。辛勝(最強のライバルを辛うじて退ける)か、それとも惜敗(あと一歩で希望通りの結果を得られない)のいずれかだ。あなたは、どちらを選ぶだろうか。

 当然、勝利を選ぶはずだ。言うまでもない。

 いや、本当にそうだろうか。最近『ネイチャー・コミュニケーションズ』誌に掲載された私たちの研究(博士研究員のヤン・ワンと共同で実施した)によると、話はそう単純ではないのかもしれない。

 私たちは、米国の1000人以上の若手科学者について調べた。対象者は、重要な研究助成金を辛うじて獲得できた人か、あと一歩で逃した人だ。その人たちのその後を調べたところ、長い目で見ると、惜敗を経験した人のほうが平均して影響力の大きな業績を残していた。

 この研究結果は、勝利と敗北がその後の人生に及ぼす影響に関して、これまでの定説に疑問を投げかけるものだ。この発見は、イノベーションを志す人たちとイノベーションを支援する機関にとっても大きな意味を持つ。