大事なのは人とカルチャーの変革

――ピボットを実行する段階では何が重要になりますか。

 一番大事なのは、人とカルチャーの変革です。例えばデジタル・ファーストの新しいビジネスを拡大するためには教育に加えて新たなスキルを持つ人がもてはやされ活躍する環境を作ることが必要です。アクセンチュアが長年培ってきたシステムインテグレーションの仕事(企業の情報システムの構築を請け負う仕事)と、イノベーションを起こして価値を創出する仕事では、求められる能力や思考などが大きく異なります。

 まず、当社が取り組んだのは、変革のリーダーとなるマネジング・ディレクター(MD)の再教育です。その中で当社が変革することの意味合い、新たなスキルを持つ人材が高く評価されること、その人が活躍する土壌を作ることの重要性を徹底的に刷り込み、日々のプロジェクトワークに反映させます。そのため、2015年以来、社員教育に毎年約10億ドルかけています。具体的には世界で5ヵ所のグローバル・ラーニング・センターにおける座学形式の学習と、アクセンチュア・コネクテッド・ラーニングというデジタル学習環境を社員に提供しています。

 ただし、学んだ知識が生かせる場とそれを評価する制度がなかったら、いくら学習の機会を用意してもモチベーションが上がりません。そのため、この教育を受けた人が働く場を用意し、成果を上げれば給料も上がるという人事考課の仕組みも作りました。

 また、過去・現在・未来の事業を異なるKPI(重要業績評価指標)で評価することに、MDクラスまで合意していることも重要です。既存の中核事業は利益を上げること、新規事業は新規ビジネスの数を増やすことがKPIになりますが、これが曖昧では「なぜあそこはお金ばかり使っているのか」という不満になりかねないからです。

――課題は多いようですが、日本企業のピボットは今後進むのでしょうか。

 戦後の復興などの立ち直りの早さなどを見ても分かるように、切り替えた後の対応の早さは日本人の長所だと思います。ですから、冒頭に述べたとおり、現状を客観的に分析して意思決定がなされれば、あとはスピーディに転換できると確信しています。

(取材・文/河合起季 撮影/西出裕一)