変革を実現するには「トップダウン」と
「中央集権」が不可欠

――ピボットを成功させるためには、社是の改訂にまで踏み込む必要があるそうですね。

 変えるというよりも、社是が変革を妨げる要因になっているのなら意味合いを発展的に拡大すべきですね。私も日本企業の社是は大好きで、クライアント企業の社是・社史は興味を持って読み入ってしまいます。その中で感じることは、多くの伝統的な日本企業の社是は、創業した高度成長期に作られており、その時の時代背景を企業の存在意義に反映していること。そして今の時代にフィットしていない部分も見受けられます。崇高なビジョンでも「モノが欲しいけど手に入らなかった」「いい暮らしをしたいけどできなかった」時代を背景とした企業の存在意義だったりするのです。

 モノ余りの時代といわれる現在は、モノを通してどのような喜びを見出すのか、どのような生き方をしたいのかというところに消費者(またはクライアント)ニーズが移っている。ですから、ビジネス・戦略レベルだけでなく、企業の存在意義から見直す必要があるのです。

 こうした社是を含めた変革を実現するには「トップダウン」と「中央集権」が不可欠です。「変革しないと生き残れない」と強く語れるのはCEOだけですし、既存事業で得た利益をまだ先行きの不透明な複数の新規事業に振り分けるといった投資のコントロールは、中央集権でなければできません。

――トップが大ナタを振るえないなら、外部からCEOを招くという手もありますか?

 私は必ずしもそうは思いません。自社をよく知るCEOが事業転換をするに越したことはないでしょう。

 ただ、一般にビジネスの創出が得意なリーダー(アントレプレナー)と、ビジネスの運営が得意なリーダー(オペレーター)とでは気質が異なります。過去・現在・未来の事業ポートフォリオを管理して継続的な事業転換を実現するには、その両方が必要といえるでしょう。しかし、どちらも備える経営者は極めて稀なので、異なるスキルやスタイルを持つ複数のリーダーが必要になる可能性が高いと思います。リーダーシップの人材を3つのライフサイクル・ステージに分散させるというのも選択肢のひとつです。

 実際、アクセンチュアでは過去5年間に買収した多くの企業で活躍していた起業家精神にあふれたリーダーたちを単に組織につなぎとめただけでなく、経営陣に迎え、新しいビジネスを拡大するために必要な環境を提供することに努めています。