●自分を含め、チーム全員が関わる

 スモールデータ・プロジェクトを毎年少なくとも1件、直属の部下を率いてみずから推進するとよい。そうすることで、あなた自身が多くを学び、スモールデータの効力をじかに経験し、信頼を勝ち得、優れた先例となるだろう。プロジェクトに参加するよう部下を促し、スモールデータを独自の方法で活用するよう、部下に権限を与えるとよい。

 着目点がわかれば、スモールデータを利用する好機を見つけるのは難しくないはずだ。以下の3つの分野には往々にして、ターゲットとなるチャンスがたくさん転がっている。

「ゴミデータ工場」を一掃する:一般的に、データの品質は低い。誤ったデータによるエラーへの対処に追われて、付加価値のない仕事をする時間を減らすことが目標である。

・無駄な時間を削減する:会議の開始を待ったり、同僚からの情報提供を待ったり、納品物の到着を待ったり……待つことで多くの時間が無駄にされている。そのような時間を削減することが目標である。

・引き継ぎの効率を高める:チームの一部で始まった仕事がチーム全体に広がり、やがてチーム外へと広がっていくにつれて、いい加減な引き継ぎにより、複雑さやコスト、もしくは時間が増大する可能性がある。このような引き継ぎの効率を高めることが目標である。

 要領がのみ込めてきたら、的を絞りたくなるだろう。1つの分野に集中し、野心的な目標を設定し、その目標を達成するようチームを駆り立てよう。

 ●順序立ったアプローチに従う

 スモールデータ・プロジェクトの多くは非常に単純であるため、解決策にすぐに飛びつきたくなる。だが、次のような順序立った明快なプロセスに従うことがベストであるとわかっている。

 ビジネス上の問題を明確にする。必要なデータを集める。データを分析する。改善を行う。確実に効果を上げる。次のチャンスを特定する。これを繰り返す。

 リーン方式や、シックスシグマ、データ・アナリティクス・ライフサイクル、もしくは科学的手法に馴染んでいる方なら、このアプローチとの類似点を見出すだろう。

 ●トレーニングを実施する

 自分と部下が必ずトレーニングを受けるようにする。それは、双方に実務的な経験を与え、手法の背後の「なぜ」と「どのようにして」を説明してくれる。

 我々のある顧客企業では、データ品質トレーニングとして、1回1時間30分のワークショップを8回開催し、それぞれの回で測定などの重要なトピックに焦点を当てていた。参加者は宿題として、ワークショップで学んだ原理をただちに、日常の業務で実行に移すよう求められた。ワークショップで用いられる例は、各参加者の担当分野に特化されていた。たとえば、財務担当者は財務に関する例、エンジニアは工学に関する例、といった具合だ。

 この会社では、このように原理と、職務に関連する例、そして実践による経験を組み合わせることによって、参加者が学んだスキルを即座に伸ばし、応用するよう仕向けることができた。

 ●自分の専門分野を明確にする

 自分が少なくとも一つの問題に対処できるように力をつけ、学んだことを足掛かりにして、自分に適した分野を開拓しよう。

 もしかしたら、データ品質の測定と改善がお手のものとなって、チームのデータ品質のエキスパートになれるかもしれない。あるいは、関連するメトリクスとその意味に関する専門性を培って、顧客関係に対する関心を活かすことができるかもしれない。

 そうすることで、チームに貴重な貢献ができるとともに、満足のいくキャリアを築くこともできる。

 上述のステップを取るに当たっては、次の点に注意していただきたい。

 スモールデータ・プロジェクトに注力しているからといって、現在あるいは将来、ビッグデータの取り組みは行わないということではない。実のところ、大きな問題を取り扱うにはビッグデータが必要となる。だが、より見栄えがするが、やり遂げる体制がまだ整っていないビッグデータ・プロジェクトを追いかけて、容易に成果を得られるチャンスを逃すのは、賢明ではない。

 戦略的に検討しよう。特に着手した当初は、スモールデータを重視することだ。

 ビッグデータや人工知能の採用を急ぐ潮流からすれば、ここに示された方向性にぴんとこない方も多いだろう。だが、いまから10年後の将来の組織を思い描いてみてほしい。あなたの会社で選りすぐりのデータサイエンティストとデータ技術者の一団が、いくつかの複雑な問題に取り組んでいるとよいだろう。

 だが、より能力が平準化した職場となっていることも望ましい。誰もがデータにますます慣れ親しむようになり、たくさんの好機に際して、貢献している職場だ。

 スモールデータの道は、そのような未来につながるものだ。さあ、いますぐに始めよう。


HBR.org原文:Most Analytics Projects Don't Require Much Data, October 3, 2019.

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トーマス C. レッドマン(Thomas C. Redman)
データに関するコンサルティングと教育を行う、データ・クオリティ・ソリューションズの社長。「データ医(the Data Doc)」と呼ばれる。スタートアップ企業や多国籍企業、企業幹部とあらゆる階層のリーダーなどが、データ主導の将来へと進路を定める手伝いをしている。特に、品質、アナリティクス、組織のケイパビリティに重点を置いている。

ロジャー W. ホール(Roger W. Hoerl)
ニューヨーク州スケネクタディにあるユニオン・カレッジで、統計学のブレート=ペシェル記念講座准教授を務める。アナリティクスと統計学のプログラムの立ち上げを手伝っている。前職では、GEグローバル・リサーチの応用統計学研究所を率いていた。