『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』では毎月、さまざまな特集を実施しています。ここでは、最新号への理解をさらに深めていただけるよう、特集テーマに関連する過去の論文をご紹介します。

 DHBR2019年12月号の特集タイトルは「信頼される経営」である。

 個人情報管理の問題を問われたフェイスブック、SNSで炎上したユナイテッド航空の顧客対応、ボーイングの問題隠蔽……企業の不祥事が多発しており、また、CEO個人の不正による退任も後を絶たない。信頼の棄損による影響は一過性のものではなく、場合によっては、ブランドや企業価値を揺るがすものとなりうる。ステークホルダーから信頼される経営について考える。

 ハーバード・ビジネス・スクールのサンドラ J. サッチャー教授らによる「企業は信頼をマネジメントせよ」では、筆者らの長年の研究により、信頼される企業はステークホルダーすべてと強い絆を結んでおり、そのための行動や過程はユニークであることを明らかにした。その内容をフレームワークにまとめ、ステークホルダーが企業の信頼度を見極める4つの視点、信頼回復のための5つの方法を説明する。

 サンドラ J. サッチャー教授らによる「リーダーの信頼性をどう見極めるか」では、信頼の判断基準を検証する。経営トップが絶大な権限を持つのは、その人に大切な仕事を任せたいというステークホルダーの意思の表れである。権限は、ステークホルダーが寄せる信頼の度合い次第で、大きく変わる。信頼の判断基準は、企業に対する基準となる、能力、動機、手段、影響力の4つに、正統性が加わる。この5つの基準をいかにクリアするか、事例とともに詳述する。

 フォーダム大学ガベリスクール・オブ・ビジネスのロバート・ハーレー教授による「無謀なチャレンジが信頼を損ねる時」では、イノベーションを阻害することなく、リスクを適切に管理するために、企業は何をすべきかが示される。企業には成長し続けることが求められているが、従業員に過度なプレッシャーを与えると、組織が無謀なチャレンジへと突き進んでしまうことがある。重大なリスクを抱えた商品やサービスが市場に投入されて、不備が表面化したとたん、顧客からの信頼はいっきに失われ、甚大かつ長期的な損失を招くことになる。

 クレアモント大学院大学のポール J. ザック教授による「神経科学が解き明かす信頼のメカニズム」では、神経科学、特にヒトの脳に着目した研究を中心に、ここ20年間の研究の積み重ねにより、未知の領域であった信頼構築のメカニズムを解説する。

 サンドラ J. サッチャー教授らによる「良い謝罪、悪い謝罪」では、効果的な謝罪の組み立て方を伝授する。企業で何らかの不祥事が明らかになった時、トップが謝罪の場に臨むことになる。しかし、これは難しい仕事だ。謝罪はえてして、形だけの言葉の羅列だととらえられがちで、中身のないおざなりな謝罪では、ステークホルダーとの関係を修復できないばかりか、事態がさらに悪化しかねない。

 ラディクールジャパン松本晃会長兼CEOへのインタビュー「企業を見る目は、ますます厳しくなっていく」では、ジョンソン・エンド・ジョンソン、カルビー、RIZAPグループと、名だたる企業で経営手腕を発揮してきた松本氏に、信頼の構築における注意点と危機管理の要諦を聞いた。経営やビジネスにおける信頼は「コミットメント」(約束)と「アカウンタビリティ」(結果責任)によって構築される──。松本晃氏はこれを「1丁目1番地」として掲げ実績を上げてきた。そして経営者やビジネスパーソンには、これまで以上に厳しく倫理観を求められると言う。

 経営共創基盤の冨山和彦CEOによる「企業の信頼はガバナンス経営から始まる」では、ガバナンスをいかに機能させるか、その方法論が示される。経営のトップにおけるコーポレートガバナンスからボトムの人事制度まで、制度を再設計し、機能させることが、企業の信頼を担保する道の第一歩となる。