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現代のビジネスパーソンを最も苦しめているのは、メールであろう。1日の大半を、メールを受信しては返信するという作業に費やしていないだろうか。Eメールだけでなく、インスタグラムのDM、スラックのアラート通知、フェイスブックメッセージなど、私たちの希少な時間を奪う手段が急速に進化を遂げるなか、メールとの向き合い方を根本的に見直す必要がある。


 インターネットには、メールに関するアドバイスが山ほど載っている。メール利用のコツを検索した日には、受信箱のトリアージ・体系化・整理に、人生の数年間を費やすことになりかねない。

 そうしたシステムやツールにかかわらず、メールは依然として、私たちの手に負えていない。やりたい仕事や生きたい人生から、希少な時間を奪っていく。この問題は蔓延しており、ますます多くの人が仕事とメールの量にうんざりし、そのペースは一向に落ちる気配がない。

 メールといっても、もはやEメールだけではない。メッセージは多数のプラットフォームを使って送られてくる。

 ショートメール、インスタグラム のDM、スラックのアラート通知、ボクサー(Voxer)のメッセージ、フェイスブックのインボックス等々。世界は注意を引く合図にあふれ、私たちはメッセージに返信し合う無限ループにはまり、近況をチェックし合うために、ますます多くの時間を費やしている。けれども、もしいつでもメールに「返信」しようとするならば、いつでもメールを「受信」しなければならなくなる。これは、たちの悪い問題だ。

 メールは氾濫を起こしているだけでなく、「緊急」で「重要」なふりをして久しい。フリクション(使いにくさ)がないことが問題の一つだろう。無料で手っ取り早いがために、私たちは無配慮に人の時間や注意を要求するようになってしまった。急いでメッセージを送ることが、考えを本当によく練るよりも、大事な仕事をしているように感じさせ、自分で物事を解決するのではなく、他の人に課題や宿題を委ねるようになってしまっている。

 結局、問題は返信のスピードでも、返信システムやツールの改良でもない。どれもこれも、もっと深い何かが間違っているサインなのだ。

本当の問題は自分の「注意」の使い方がわかっていないこと

 いまの時代、それよりも重要なのは、最初に何に専念するかを決めることだ。

 私たちは文化的に、線引きや優先順位づけがひどく苦手だ。それは現代の消費習慣や、近藤麻理恵のミニマル生活が広く知れ渡ったことにも垣間見られる。雑多なモノにもデジタルデータにも溺れつつある。問題はメールではなく、線引きだ。私たちが磨くべきは、メールの技術ではなく、優先順位づけの技術なのだ。

「容赦ない優先順位づけ」がもっと当たり前にならなければならない。昔は優先するものは1つだけと決まっていたと、グレッグ・マキューンは著書『エッセンシャル思考』で説明している。

 英語の「プライオリティ」という単語には、複数形が存在しなかったという。それが20世紀半ばのどこかで、複数の優先事項の存在を認めるようになり、この単語を動詞としても使うようになった。私たちは今日、1つを選んで専念するのではなく、何十個も優先事項があるようかのように振る舞っているのだ。

 リーダーやマネジャーの仕事は、何を目指し、何に注力するかを具体化し、明確にすることである。はっきりと道筋を示さなければ、従業員を無駄なメールやプロジェクトの山に埋もれさせてしまう。メールをもっと上手に活用するには、もっと上手に「ノー」と言えることが必要なのだ。

専念する対象が決まったら
メールにもより明確な線引きをする

 優先事項の絞り込み――簡単ではないが――ができたとしても、問題はまだある。メールソフトは、この線引きを人に伝えるのが得意ではないからだ。

 デジタルの世界で、相手から文脈に沿った行動を引き出すようにすることは難しく、誰もがそれをどうやってやるか悩んでいる。それには、制限を設ける人間側にかかっている部分と、テクノロジーにかかっている部分がある。

 以下に、メールの線引きと、それを相手に伝える方法を6つ紹介しよう。