YASUHIDE FUMOTO/GETTY IMAGES

「情熱」「好き」「夢」「世界を変える」……新卒者に対する仕事選びの助言の中に、こうした言葉を見かけることは多いが、筆者は見当違いだと切り捨てる。もちろん、夢を諦めなさいというアドバイスを推奨するわけではない。若者たちの職業選択の視野を広げるために、3つの基準で検討することを提案する。


 ルイーザ・クロープは26歳、ファッションおよびセールス・マネジメントの修士号を取得して、卒業したばかりだった。同輩の多くのように、彼女は聡明かつ有能で、自分の新たなキャリアへの熱意にあふれていた。だが、仕事は見つからず、就職活動も5ヵ月目に入って、彼女はすっかり意気消沈していた。

 ルイーザは、助言を求めて私の元にやって来た。もともと大学院に進んだとき、彼女はドイツでファッション小売業者向けのバイヤーになるというビジョンをもっていた。だが、就職活動を開始して数ヵ月が経ち、もはや万策尽きたと言う。

 ドイツで新卒向け「バイヤー」の仕事に応募しており、25通を上回る応募書類を作成し、4回の面接にのぞんだにもかかわらず、成果はなかった。そしてもはや、残された道は一つもないと言うのである。

 だが、本当にそうだろうか。「適職」をいま手に入れられなかったというだけで、ファッション業界に入る夢を諦めるべきなのだろうか。けっして、そんなことはない。

 私たちは新卒の学生に、善意からの助言をたくさん与える。「夢を追って!」「自分が情熱を傾けるものを見つけよう!」「自分が好きなことをしよう!」「世界を変えよう!」「ああ、それから、お金も稼がないとね」

 だが、どの助言も見当違いだ。「情熱」「好き」「夢」「世界を変える」――これらは、初めて自分自身の足で一歩を踏み出そうとしている、しかも往々にして多額の学生ローンを抱えている若者を惑わせる言葉である。

 そして、誰も人の夢を打ち砕きたいなどとは思っていないものの、「情熱に従え」とは、ひどい助言であることが多い。好きな仕事を探し求めるのは、大多数の人にとって空をつかむようなものである。その証拠は、至る所に転がっている。

 ルイーザのような若者は、どんな仕事でもまずは就職すべきなのか、あるいは適職を待つべきなのかを判断するのは難しいと感じるだろう。だが、答えは「右か左か」ではないのかもしれない。「夢の仕事」を探し求めるかわりに、こんなふうに自分に問いかけてみるといい。「ゆくゆくは、心躍り、心血を注げて、自分の得意なことを生かせる仕事を見つけたい。そのために、いま何ができるだろうか」

 なぜなら現実には、20代前半に自分が本当にやりたいことを知るのは、必ずしも可能ではないからだ。卒業時に自分が何をやりたいかわかっていて、10年後も20年後も、30年後もまったく同じ分野にずっといる人など、めったにいない。

 私は、米政府のボランティア活動部隊である平和部隊から職歴を開始して、ゴールドマン・サックス、米環境保護庁(EPA)、エクソンモービルと転職し、いまは起業家兼コミュニケーション専門家である。このような経歴を築くとは、22歳当時の私には思いもよらなかった。

 そろそろ、新卒向けのアドバイスを見直すべきだろう。自分の期待を下げたり夢を諦めたりするのではなく、視野を広げ、その過程で重圧をいくぶん軽くし、ほぼすべての仕事から価値と学びを得られると、認めるといい。

 チャンスを見極める際には、自分の長期目標にとって「適正」または「完璧」かではなく、のちに役立つ何かをいま得られるかどうかに基づいて判断することだ。

 具体的には、次の3つの基準を考慮するといい。それは、検討している仕事が、「経験」か「信用」か、あるいは「収入」をもたらすか、である。