成長とともに複雑になる子どもの世話

 妊娠・出産を経て職場復帰した後、働く親の大半が、次なる大きな変化として直面するのは、子どもの入学である。突然、それまで頼っていた保育サービスに頼れなくなるからだ。

 米国の教育制度は、フルタイムで子どもの面倒を見てくれるとは言いがたい。平均すると「学期中」の10ヵ月のうち29日は休日だ。夏休みのような長期休暇だけでなく、授業のある登校日と親の就業日が完全に一致しないことからも、保育の空白が生じる。

 働く親にとって、こうした保育の空白を乗り切るのは、乳幼児のためにフルタイムの保育を確保するよりも難しいことが多い。

 働く母親の多くは、学齢期の子どものために質の高いサービスを確保し、その費用を捻出するのは大変なことで、不意打ちを食らったような気がしたと話してくれた。私たちがインタビューしたある母親は、娘が入学しても子育てにかかる費用がたいして減らないことに愕然とし、夫婦で家計を見直さなくてはならなかったという。

 子どもが中学、高校に入って親離れしていってもまだ、世話が必要だ。しかし、10歳前後からティーンエイジャーを対象とした放課後プログラム、保育や見守りの選択肢は、ぐっと少なくなる。高校生になれば、親が管理監督する場面は減るものの、彼らの生活はたいてい忙しく、さまざまな活動、放課後のアルバイト、社会活動に参加するための送り迎えが必要になる。研究によると、こうした仕事は他の子育てに関するタスクと同様、父親ではなく主に母親がその役割を担っている。

 ティーンエイジャーは小さな子どもの世話に比べれば、それほど体力や時間が必要ではない。だが、子どもがアイデンティティを確立し、複雑な社会的問題や精神的問題を乗り越えていく時期であり、親はそれまでよりも多くの感情労働(emotional labor)を要することが多い。

 残念なことに、新米の母親の搾乳や産休には協力的だった上司や同僚も、子どもが成長した母親の要求には気づかず、あるいは気づいたとしても認めないことが多い。一方、親はキャリアが進むとともに、仕事の責任も増していく。年長の子どもの子育ては目に見えないことが多く、女性にとっては、仕事と家庭に関する選択が、よりいっそう難しく感じることもある。

 たとえば、私たちがインタビューした技術営業のコンサルタントは、昇進を打診されたとき、葛藤を覚えたという。昇進すれば頻繁に出張する必要が生じるからだ。一番下の息子が高校の最終学年だったため、引き受けるかどうか迷ったそうだ。

 子どもがもっと小さかったときは、新しい機会を検討するにあたって仕事と家庭の両立をじっくり考えることができるよう、マネジャーが積極的にサポートしてくれた。だが今回は、彼女が母親であることを誰もが忘れてしまったかのように見えた。彼女は懸念をはっきりと説明できない気がして、結局、昇進を断ってしまった。

大きくなった子どもを育てるプラスの面

 もちろん、子どもが大きくなるのは悪いことばかりではない。

 私たちがインタビューした親は、仕事と家庭の要求はなくならないにしても、上手に両立できる態勢が整ってきて、自分の失敗を許せるようになったと話している。複数の仕事をこなし、時間管理が上手になり、仕事でも家庭でも、優先度の高いものにエネルギーを集中投下できるようになる。

 また、社員としての役割と親としての役割が、さまざまな形で相互に良い影響を与えることもわかってくる。米国連邦最高裁判事のルース・ベイダー・ギンズバーグは、自分がロースクールで優秀な成績を収められたのは、主に子育てのおかげだったと述べている。「生活のそれぞれの部分がほかの部分の息抜きになり、法律の勉強だけしかないクラスメートに欠けているバランス感覚を与えてくれました」

 子どもが成長するにつれて、期待も進化する。数多くの女性が、働く母親としてのアイデンティティに満足し、自信が持てるようになったと話してくれた。仕事と家庭が調和し、自分にとって最適な状態にたどりつくと、「完璧な母親」や職場のスタープレイヤーになれるかどうかという不安は消える。

 子どもからのフィードバックも肯定的になる。ティーンエイジャーの子どもは、なぜ働くのかと親に質問するのではなく、親の仕事に誇りと関心を示すようになる。働く母親は、すでに研究で明らかになっていることを実感し始める。すなわち、自分のキャリアは長期的には、子どもに圧倒的にポジティブな影響をもたらすのだ、と。