●驚くべきではないこと

 ビジネスリーダーたちは、主要ステークホルダーから、「もっと持続可能な事業を構築すべきだ」というプレッシャーを感じている。

 なかでも大きなプレッシャーを感じるステークホルダーは、顧客と従業員だ。この2つのグループの中でも、とりわけミレニアル世代とZ世代は、自分が勤めていたり、商品を買ったりする会社に、何かを身をもって主張してほしいと感じている。

 ザイレムのパトリック・デッカーCEOは、「若い世代ほど、崇高なパーパスやミッションに魅了される」と語る。「『なぜこの仕事をするのか』という意味を求める。利益だけが動機ではない」。しかもこうした要求は、譲れないものになりつつあるようだ。「消費者と顧客は、私たちが正しい方法でビジネスをやっているという保証を求めている。それが常態になりつつある」と、モルソン・クアーズのマーク・ハンター社長兼CEOは語る。

 もう一つ、筆者にとって意外ではなかったのは、持続可能性と伝統的な業績のトレードオフについて、CEOたちが緊張を感じていることだ。

 この緊張は誇張されがちだが(実際には持続可能性は多くの形で価値を生み出す)、短期的な利益と長期的な価値の間に緊張が存在するのは事実である。実際、CEOの半分以上が、「長期的な戦略目標に投資したいが、極めて強力なコスト意識をもって事業を展開するプレッシャ―にもさらされており、大きなトレードオフを強いられている」と回答している。

 ●やや驚くべき発見

 実に88%ものCEOが、「世界の経済システムは、平等な成長に向けて軌道修正する必要がある」と考えている。格差拡大への不満は、10年前の抗議運動「ウォール街を占拠せよ」を、メインストリームにした。ビジネスリーダーたちは、これを不安定要因と見なしているのだ。

 あるCEOは次のように語っている。「野放しの資本主義は、極度の貧困、社会の混乱、そして地球の困難を生み出してきた。富の社会への移転をもっとうまく管理しなければ、大変なことになるだろう」

 持続可能性がどのような価値をもたらすかに関するCEOたちの意見は、やや奇妙に感じられる。報告書によると、「CEOたちは、持続可能性が競争優位をもたらすと考えている」ものの、具体的な価値創造を指摘したCEOは、さほど多くなかったのだ。増益を挙げたCEOは40%、コスト削減を挙げたCEOは25%にとどまった(容易に勝利を得られる時期は終わったということかもしれない)。

 ただし、持続可能性の実現を妨げる問題について語るとき、「市場の需要がない」と答えたCEOは28%しかいなかった。「持続可能なプロダクトは需要が弱い」と長年言われてきたことを考えると、これは嬉しい驚きだ。

 ●有望かつ心強い結果

 持続可能性は、いまや確固たるアジェンダの一つとなった。これは長年かけて得た勝利と言っていいだろう。

 大企業のCEOは、「持続可能性は、自社のビジネスが将来にわたり成功を収めるうえで重要な問題だ」という点で、ほぼ意見が一致している(そのくせ、みずからの報酬を持続可能性の結果とリンクさせているCEOは62%にすぎないが)。また、社会において自社の中核的目標と役割を示すことに個人的責任を感じているCEOは、94%にも上る。

 もう一つ喜ばしいのは、一部の障壁は縮小しているらしいことだ。「(持続可能性)と企業価値の間に明確なつながりがない」と答えたCEOは25%しかおらず、問題は「知識の欠如」だと答えたCEOも8%しかいなかった。

 現代の最大の課題、すなわち気候変動に関して、CEOたちの否定レベルは劇的に低下した(筆者の経験とUNGCの報告書の両方でそうだった)。

 企業はもはや、気候変動は未来の指導者が管理する問題だと考えていない。BASFのマーティン・ブルーダミュラー会長は、「私たちはすでに現在、事実上毎日、気候変動のインパクトを経験している」と語った。気候変動のような大きな問題に取り組むためには、システムレベルでの変革が必要であることを、CEOたちは理解しているのだ。

 今回の調査で、社会からの信頼と期待も、明確なテーマとして浮上した。約75%のCEOが、競争力を確保するうえで、市民の信頼が決定的に重要だと答えている。

 ナチュラのジョアン・パウロ・フェレイラCEOは、「消費者から信頼できないと思われてしまったら、その企業やブランドは大きなダメージを受ける」と語っている。デビアスのブルース・クリーバーCEOのコメントは、もっと具体的だ。「消費者にとって、『このブランドは信用できるか』という問いが決定的な意味を持つときがくるだろう。その答えが『ノー』なら、そのブランドの商品は買ってもらえなくなる。二者択一の問いになる」