聴衆の注意を取り戻すための私のお気に入りのテクニックは、まずステージの別の場所に移動することだ。

 ステージが標準的な配置の場合、プレゼンターは当然のごとく、演壇の前に立って話をする。メモをこっそり置いておく場所があるし、いかにも視線にさらされている感じがしないので、初心者にとっては安心だ。だがそれでは、物理的な存在としての自分を活用する、大きなチャンスを逃すことになる。

 あなたがもし、ずっと同じ場所に立って、一部の聴衆の前でしか話をしていない場合、ほかの場所に移動することで、それ以外の人々の注意を取り戻すことができる(突然あなたが近づいてきたら驚いて、あるいはそれが礼儀だと思うからかもしれないが、あなたに目を向けざるをえない)。会場がステージではない場合、このテクニックをさらに進めて、部屋を歩き回ってもよい。やりすぎはよくないが、この作戦を賢く使えば、聴衆はあなたが次にどこへ移動するか予測しながら、目で追いかけるだろう。

 2つ目の戦略は、発言のテンポを加減することだ。棒読みが致命的なことは、誰しもわかっている。だが、たとえ豊かな抑揚があっても、最初から最後まで同じペースで話してはダメだ。

 早口の場合、聴衆は言葉の機関銃を浴びているように感じるし、逆にゆっくり話すと、次に何を言おうとしているのかを察した聴衆がイライラし始める。だが意図的にテンポを変えると、彼らはハッとする。ここで何か変わるのだろうか。なぜこの部分を強調しているのだろう。そして、話の内容に再び集中しようとする。

 声を絞ったり、間を置いたりすることにも、同様の効果がある。私は重要なポイントに注目させたいときには、わざと声を絞って、ささやくように話す。すると聴衆は何が起きているのか理解しようとして、ひたすら集中する。ときには何拍か間を置いて、彼らが結論を知りたくてウズウズしてくるまで沈黙することもある。

 特に効果的なのは、修辞的な疑問文の直後だ。「市場占有率40%を実現するのは、とうてい不可能に思われるかもしれません。では、私たちはどうすればいいのでしょうか」。タイミングをはかった沈黙は適度なスリルを与え、聴衆はあなたが次に何と回答するのか知りたくてたまらなくなる。

 さてここまで、聴衆の注意をその場ですぐ取り戻すための、物理的なテクニックを紹介してきた。だが彼らの気が逸れる原因が、あなたの資料が無味乾燥だったり専門的すぎるためだったりしたら、効果は限られてしまう。

 たとえば、エンジニア部門にとって理想的なプレゼンテーションでも、より広範なリーダーシップチームには話が細かすぎるかもしれない。聴衆とのつながりを取り戻すための最後のテクニックは、ストーリーや比喩で要点を説明することだ。

 たとえ聴衆が特定の技術仕様に精通していなくても、ローカル列車と高速鉄道の違いならわかるだろう。現実世界の似たような例を引くと、誰にでもわかるようにポイントを伝えることができる(もし研究開発に100万ドルの追加投資をすれば「高速鉄道」並みの性能が得られると言えば、提案の説得力が高まるだろう)。

 有能なスピーカーは、聴衆が実際に、彼らの発言に注目するよう工夫する。もしあなたが人々に情報を提供し、教育し、刺激を与えたいと本気で考えているのなら、彼らの注意を引きつけ、必要に応じて再び自分の話に注意を向けさせる方法を身につけなければならない。

 本稿で紹介した4つの戦略を駆使すれば、聴衆の注意が途切れたり逸れたりしても、すぐに取り戻して、あなたのメッセージにもっと耳を傾けてもらえることができる。


HBR.org原文:What to Do When You're Losing Your Audience During a Presentation, September 19, 2019.

■こちらの記事もおすすめします
プレゼンが上手な人は聞き手に「思いやり」を持っている
重要なプレゼンテーションを成功させる5つのポイント
経営陣を動かすプレゼンは4つの要点を押さえている

 

ドリー・クラーク(Dorie Clark)
マーケティング戦略のコンサルタント、講演家。デューク大学フュークア・スクール・オブ・ビジネスでも教鞭を執る。著書にEntrepreneurial YouReinventing YouStand Out(いずれも未訳)がある。無料の自己診断プログラムRecognized Expertも受けられる。