理由3:米国のトラック運転手の数は、一般に思われているほど多くはない

 多くの記事は、米国のトラック運転手の数を約300万人としているが、実際にはもっと少ない。つまり、失われる雇用の数は、たとえ最悪の場合でも300万よりは少ないのである。

 米国連邦政府の標準職業分類(Standard Occupational Classification)には、「運転手・セールス従事者およびトラック運転手」という項目があり、これはさらに3つのグループに分かれる。「運転手・セールス従事者」「軽トラック・配達サービス運転手」「大型トラック・トレーラー運転手」。米国労働統計局によれば、これらのグループに属する就労者は合計310万人に上る。

 しかし、標準職業分類マニュアルの記述を見ると、「運転手・セールス従事者」はトラック運転手ではない場合が多い。そして「軽トラック・配達サービス運転手」には、トラックの運転を伴わない職もたくさん含まれている。さらに、両グループの運転手は地域レベルで稼働している可能性が高いため、長距離運送向けのレベル4技術の発展による影響を被ることは、あまりないと思われる。

 トラック運転手には通常、営業用自動車免許が義務づけられている。3つのグループのうちこれが必要なのは「大型トラック・トレーラー運転手」のみであり、2018年時点で約180万人がいる。ここに、個人事業主のトラック運転手(米国労働統計局の総計には含まれていないが、推計では全大型トラック運転手の約10~25%)を加えると、全米の大型トラック運転手はおよそ240万人になる。

 この中で、レベル4の技術が最も進んでいる業界で働く長距離運転手の人数を算出し、さらに個人事業主で潜在的影響を被る人を11万4000人と想定した。すると、自動化で最初に職を失うおそれのある人は合計45万6000人となる。自律走行トラックに関する記事の見出しが示す数字よりも、はるかに少ないのだ。それでもかなりの数ではある。米国の全労働者の0.3%に相当し、おおむね同程度の職業訓練が必要な溶接工の総数に近い。

 なお、レベル4技術の迅速な導入を阻害しうる、運用面および規制面のハードルもある。第1に、トラックは稼働中にさまざまな理由で故障するものだ。そして現時点では、自律走行トラックを速やかに修理し、かつ貨物の盗難も防ぐようなインフラは整っていない。

 第2に、州をまたぐトラック運送は、複数の関係当局が絡む複雑な事項である。自動車の安全基準を定めるのは、連邦政府だ。一方、州政府は運転手と車両に免許を与え、道路交通法を制定し、道路上で許容されるトラックのサイズと重量を規定する。そして各地方自治体は、地域の道路と駐車場をトラックがどう使うかを規定する。すでに複数の州が、それぞれ異なる方法で独自の規制へと動く様子が見られ、なかにはレベル4技術の活用を制限している州もある。

 これらすべての要因は、次のことを明白に示している。大型トラック運送業の雇用が百万単位で失われる事態は、近い将来には起きそうにないということだ。

 しかし、数としては一部の見出しが報じるよりも深刻ではないとはいえ、トラック運送という職は就労規模がきわめて大きい。そして景気の変動、複雑化が進むサプライチェーン、労働人口動態の変化などによって、すでに大きな困難に直面している。

 したがって、この業界に今後10年を通して突きつけられる課題を――自動化が引き起こす諸問題も含め――正しく理解することは、ますます重要となるのだ。


HBR.org原文:Automation Isn't About to Make Truckers Obsolete, September 18, 2019.

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モーリー・ギトルマン(Maury Gittleman)
米国労働統計局のリサーチ・エコノミスト。報酬調査に加え、主に労働経済学の分野でさまざまなテーマを研究。

クリステン・モナコ(Kristen Monaco)
米国労働統計局の報酬・労働条件担当次官。労働者の賃金と安全に関する多くの著作があり、特に運送業の労働市場に焦点を当てている。