筆者らは分析のために、2通りの方法で企業群をグループ分けした。

 第1に、企業戦略の大胆さを基準とした。

これを測定するために、前述したポートフォリオとポジショニングの変更度合いに加え、抜本的な改革に向けた企業の本気度を表す2つの指標も加味した。まず、自社内で既存の収入源と食い合う(カニバリゼーション)という代償を払ってでも、それらの変更に踏み切っているか。次に、デジタル技術への投資意図がどれだけ強いか、である。カニバリゼーションとデジタル投資の割合が、競合・同業他社よりも高ければ、より大胆な戦略ということになる。

 この分類をもとに、4つの異なるグループを特定した。分析対象企業のうち13%は、攻めの姿勢が最も強い(筆者らが「大胆不敵」と呼ぶ)グループに属する。これらの企業は同業他社に比べ、ポートフォリオと投資の再編をはるかに大々的に行っており、既存の収入源とカニバリゼーションを起こしている度合いも高い。

 加えて、ある明白な傾向が現れた。デジタル戦略がより大胆であるほど、デジタルトランスフォーメーションの成果も高いのだ。筆者らのデータ群において、企業戦略の大胆さは、売上高の伸び、利益率の伸び、デジタルの投資対効果というすべての面で、有意に優れた成果と相関していた。

 企業群をグループ分けする第2の方法として、どんなデジタル戦略を追求しているかを基準とした。

ここで筆者らは、デジタル戦略を6つにまとめた。最初の3つは本質的に「攻め型」であり、新たな需要、新たな供給、または新たなビジネスモデルの確立を狙うものだ。残る3つは「守り型」で、従来の活動の改善を目的としている。

6つのデジタル戦略

 ●プラットフォーム展開

 分析対象企業の3分の1は、程度の差こそあれ、プラットフォーム戦略を展開していた。その目的は、自業界のバリューチェーンを再定義することによって、顧客とサプライヤーのより直接的な関わり合いを可能にし、ネットワーク効果のメリットを享受することだ。

 プラットフォームは、バリューチェーン上の価値の流れを劇的に変える力を持つ。典型的な事例として、ホテルチェーンのアコーは、自社の予約プラットフォームを他の独立系ホテルにも解放している。

 ●新たな限界供給

 ごく一部の既存企業(13%)は、デジタル技術を用いて、これまで閉ざされていた供給源を限界費用で活用できるようにしている。これは多くの場合(必ずではないが)、プラットフォーム展開との組み合わせで行われている。たとえば、スウェーデンの小売企業H&Mとイケアは、製品の購入者にオンラインでの再販オプションを提供し、使い古した同社製品を顧客同士で売買できるようにしている。

 ●デジタル対応の製品・サービス

 企業の約55%は、デジタル機能を持つ新製品や新サービスを生むために、デジタル技術を用いている。その狙いは通常、新たな需要に応えるためだ。一例としてP&Gの歯ブラシ、ブラウンオーラルBは、ブルートゥースで動くデジタルガイド機能によって歯磨きのアドバイスをしてくれる。

 ●リバンドルとカスタマイズ

 企業の60%は、製品・サービスをリバンドル(再構成)して既存顧客へのメリットを高めるために、デジタル技術を活用している。『ニューヨーク・タイムズ』紙が先駆けとなったニュース記事の有料化はその好例で、読者は購読リストをカスタマイズでき、読みたい記事を整理できる。

 ●デジタルの流通・販売チャネル

 多くの企業(約60%)は、製品・サービスへの顧客のアクセスをより簡単にするために、デジタルの流通・販売チャネルに投資している。

 ●コスト効率

 分析対象企業の約半数は、コスト効率を高めるためにデジタル技術を用いており、通常は自動化やコスト縮小によってそれを実現している。オペレーションの卓越性が当たり前となっている現代では、この戦略は比較優位の源泉を生むためではなく、自社が生き残るためのものと思われる。

 分析結果によると、成功している企業、なかでも大胆な企業戦略を進めている企業は、攻め型のデジタル戦略3つのいずれかを採用している傾向が非常に顕著であった。成果が大きいデジタルトランスフォーメーションは、コスト効率への注力が有意に少なく、新製品や新規顧客に重点を置いているのだ。

 デジタルトランスフォーメーション、および変化への適応に本気で取り組む企業にとってカギとなるのは、自社の戦略が真に「変革」であり、単に一連のコスト削減策とならないよう、万全を期すことである。筆者らのデータによれば、デジタルで攻める企業は、プラットフォーム型のビジネスモデルを携えて市場に参入する場合が多い一方、既存企業がそれを実行するケースはごくわずかだ。

 すなわち既存企業の敗因は、その守りの姿勢にある。デジタルに破壊される事態をうまく回避したいならば、攻めなくてはならない。


HBR.org原文:6 Digital Strategies, and Why Some Work Better than Others, July 31, 2017.

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ジャック・ブギャン(Jacques Bughin)
マッキンゼー・グローバル・インスティテュートのディレクター。ブリュッセルを拠点に活動。

ニコラス・ファン・ゼーブロック(Nicholas Van Zeebroeck)
ブリュッセル自由大学ソルベイ・ブリュッセル経済経営学院の教授。イノベーションとデジタルビジネスを担当。