素晴らしいと思われるだろうか。

 事実、データサイエンスは素晴らしい。だが、企業トップのあなたが「我が社もいますぐ、データサイエンスだ」と宣言するだけでは足りない。データサイエンスには独自の方法がある。データサイエンスが力を発揮する環境をつくり出す必要がある。

 ●第1に、データサイエンスを独自の部門と位置づける

 マーケティングや、製品、財務といった他の部署の配下に置いてはならない。代わりに、CEO直下の独自の部署としよう。

 場合によっては、データサイエンスチームが他の部署と協働して、ソリューションを提示する必要もあるだろう。だが、それは等しい立場のパートナーとして行い、他部署が求めたものを単に実行するサポートスタッフとしてではない。

 データサイエンスを他部署に仕える支援チームと位置づけるのではなく、事業目標に対する責任を持たせるとよい。そして、そのような目標を達成する責任を課すのである。ただし、そのソリューションを見つける方法はデータサイエンティストに任せるとよい。

 ●第2に、データサイエンティストが自律して動くのに必要な技術リソースは、すべて与える

 データサイエンティストは、データのみならず、探索を処理するための計算リソースにも十分にアクセスできる必要がある。リソースを利用するのに許可や申請が必要だとコストがかかるし、探索の範囲は狭くなるだろう。私が勧めるのは、計算リソースが伸縮自在で無限に等しい、クラウド・アーキテクチャの活用である。

 データサイエンティストは、自分でプロセッサーを操り、探索を実行するためのスキルを備えている必要がある。優れたゼネラリストである必要があるのだ。

 ほとんどの企業は、データサイエンティストをスペシャリストのチームに分けている。たとえば、モデラーや機械学習エンジニア、データエンジニア、因果推論アナリストなどに分けて、より焦点を絞れるようにしている。だがこれでは、1つの探索に関わる人材が大勢必要となる。複数の人材の調整は、じきにコスト高となる。

 代わりに、あらゆる機能をこなすスキルを備えた「フルスタック」のデータサイエンティストを活用しよう。そうすれば、物事を試してみるコストを抑えられる。ティンカリングには、前述の機能がすべて必要となるからだ。

 もちろん、データサイエンティストでも、すべてのエキスパートにはなりえない。そこで、彼らが分散処理やオートスケーリングといった複雑な作業から抜け出せるよう、データプラットフォームを用意するといい。こうすれば、データサイエンティストが技術的な側面に気を取られることなく、検証と学習を通じて事業価値の推進にさらに注力できるようになる。

 ●最後に、学習と実験を積み上げるプロセスを支える文化をつくる

 これはすなわち、経験を通した学習や、あいまいさの許容、長期的リターンと短期的リターンのバランスといったことに対して、企業全体が共通の価値観を持つ必要がある、ということを意味する。このような価値観は、一人が持っていたところで活かしようがなく、組織全体で共有される必要がある。

 ただ、即座に自社で実践する前に、覚悟しておきたいことがある。より従来型に近い企業で実施するのは、不可能とは言わないまでも、かなり困難である。スティッチ・フィックスのようなスタートアップ企業でも、もしデータサイエンスに自律性を創業時から与えていなければ、うまく機能していたか私にはわからない。

 私はスティッチ・フィックスに6年半在籍し、幹部職に就いているが、データサイエンスを後から「導入する」必要はなかった。創業したときからデータサイエンスは存在していたため、データサイエンスに必要な仕事の方法は、私たちにとってより自然なものであったのだ。

「データサイエンスは、従来型の成熟企業では失敗する運命にある」などと言うつもりはない。それでも、ゼロから始めるよりも困難であるのは確かだ。とはいえ、データサイエンスを活用して奇跡的な変化を成し遂げた企業もある。そして、この変化は非常に重要であり、挑戦しないわけにはいかない。

 データサイエンスを活かすモデルの恩恵は甚大であるため、データサイエンスを競争優位としたい企業であれば、ここに紹介したアプローチが自社に有効かどうか、検討する価値はあるだろう。


HBR.org原文:Curiosity-Driven Data Science, November 27, 2018.

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エリック・コルソン(Eric Colson)
スティッチ・フィックスのチーフ・アルゴリズム・オフィサー。前職は、ネットフリックスのデータサイエンスおよびエンジニアリング担当バイスプレジデント。ツイッターは@ericcolson