日本企業に有効なコレクティブ・インパクト

 日本では、社会課題についての話題が上がると、「うちの会社だけではどうにもならない」と言うビジネスリーダーが多い。筆者自身もよく耳にするし、NGO団体代表も企業とのコラボレーションを呼び掛けても、必ずそういわれると嘆いていた。もちろんSDGsがあげている社会課題は非常に大きくかつ深刻な問題で、1社の努力で解決できるようなものは何もない。そこで必要となるのがコレクティブ・インパクトである。

 コレクティブ・インパクトとは、社会課題解決のためにセクターを超えたプレーヤーが集結し共通の目標達成にコミットして協働していくことであり、近年浮上したコンセプトだ。この方法論によって、複雑な社会課題を解決する成功率が高まるだけでなく、より広いビジネス界や社会と繋がる入口が企業にもたらされる。その詳細については、「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」2019年2月号の特集記事に譲るとして、本稿では、グローバルなビジネスリーダーたちは、国や組織を超えて様々な人を巻き込んで社会課題を解決していることを付け加えておく。

 例えば、米国では、アマゾン・ドットコム、ウォルマート、ユニリーバを始めとした企業10社が合同で1億ドル(100億円強)を拠出してClosed Loop Fundというファンドを組成し、廃棄物削減やリサイクリングの仕組みづくりを各地方自治体と共に行っている。

 そもそもSDGs自体も、SDGsの実現に向けてマルチ・ステークホルダー・パートナーシップを構築していくことを「目標17」で掲げている。目標17は主に政府機関に向けられたものではあるが、企業がパートナーシップにおいて重要な役割を担うことは間違いなく、リードする立場にたってもおかしくはない。

 グローバルな社会課題解決では存在感のない日本企業だが、国内では事例がないわけではない。東日本大震災後の復興では、コレクティブ・インパクトに近いような取組みが少なくなかった。また、認知症患者が社会と共生できることを目指すエーザイのリビングラボという取組みも興味深い。

 海外での例としては、日立化成がオーストラリアの連邦科学産業研究機構のために、RFIDという超小型無線タグシステムの技術開発を行った、世界蜜蜂保全イニシアチブが挙げられる。この技術によって可能となった蜜蜂行動観察システムにより、世界的に発生していた蜂群崩壊症候群の流行を抑えることに寄与したのだが、同時に、RFIDの超小型化技術は、様々な用途にも応用可能なので、将来的に日立化成に利益をもたらすことになると想定される。

 日本は人口減少時代に突入し、企業は経済価値の成長を海外市場に求めている。だからこそ、グローバル社会にも社会価値をもたらし、SDGsの先進企業となる可能性と責任がある。

 

リシ・アガワル(Rishi Agarwal)
FSGマネージング・ディレクター兼アジア事業担当リーダー。FSGは2000年に、ハーバード・ビジネス・スクール教授のマイケル・ポーター氏と、同スクール上級講師のマーク R. クラマー氏によって創立された社会貢献をグローバル規模で支援するコンサルティング企業。

黒田 由貴子(Kuroda Yukiko)
ピープルフォーカス・コンサルティング取締役、ファウンダー。同社は、組織開発やリーダーシップ開発に関する企業内研修やコンサルティング、経営層向けにエグゼクティブコーチング等を手掛ける。