グローバルな競争力にはグローバルな体制と視点が必要だ

――AI、ビッグデータ、IoT、ロボティクスといったデジタル技術の進展が、イノベーションを加速させるとの見方もありますが、どのようにご覧になっていますか。

 月並みですが、かつて多くの人がインターネットを使ってさまざまなビジネスを生み出したのと同じように、それらのインフラを使って、多様な人たちが新しいビジネスを始められるようになる。イノベーションの担い手が大衆化し、大きな設備投資ができないスタートアップにとってもチャンスが得られる、そんな世界を期待しています。

 いままで特定の人しか使えなかった技術が大衆化し、どんどん使えるようになると、普通の人が、ある日、突然、新しいことを生み出したりすることが簡単にできる時代がやってくる。そうすると、最終的には、自分のほしいものがすべて自由にカスタマイズできる、そんな世界になるのでしょうか。自分の好みはすべてデータ化されていて、必要な時に、必要なものが3Dプリンターでひょいとつくったりできるかもしれません。

――「日経・一橋大イノベーション指数」の調査では、米国や中国のIT巨人が上位を独占していました。現時点において、GAFAやBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)がイノベーティブな企業であることに異論はありませんが、日本企業がグローバルな競争力を高め、彼らと伍していくには何が必要ですか。

 中国のIT巨人について、詳しくはわかりませんが、おそらく会社自身がグローバルなんだと思います。たとえば、いろいろな研究所を海外に開設したり、海外で学んだ人材を積極的に採用するなどです。数多くの若い中国人が欧米に留学していますが、日本人はあまり行かなくなりました。ドメスティックに閉じている印象です。

 米国には、米国人じゃない人たちがいっぱい来ているので、そもそもあの地にいること自体、多様で優秀な人材が集まってくるということになりますが、日本にはそれがありません。日本で、日本人が「グローバル」と言ったところで限界があるのかもしれません。

 グローバルな競争力を高めるには何が必要かという問いに対しては、トートロジー(同語反復)ですけれど、グローバルな体制を持つかどうか、グローバルを市場と見るかどうかに尽きると思います。ですから、GAFAなどと伍していくのであれば、最初からグローバルな視点を持っていないといけないし、チームも人もグローバルにしないとダメです。

 最初からグローバルな体制と視点を持つことは、従来の日本企業にとって得意なことではありませんでしたが、ソフトバンクや楽天など、得意な会社も出てきています。得意でないとしても、IT巨人がつくった大きなプラットフォームをうまく活用して、競合他社が真似のできない技術を開発していく方法もありますし、引き続き、材料など日本企業が強みを発揮する領域も残されています。IT巨人を脅威と見ることなく、“餅は餅屋”という戦い方も模索すべきでしょう。

――既存の大企業、スタートアップを含め、日本の企業を楽観的に見ていますか、それとも悲観的ですか。

 「景気がよい」ということはいいことです。ただ、アベノミクス以降の好景気は政策的な後押しが強いので、それについては注意すべきです。本当は利益が出ているいまこそ、もう少しリスクを負った投資を行うべきで、それができていないとすれば、先行きは楽観できません。

 若い人たちのなかには、社会的課題の解決を掲げて、起業する人も増えています。これ自体は非常にいいことだと思いますが、ビジネスとして大きく成長していくには、社会的な支援や大企業のサポートも欠かせません。起業家を支える社会インフラの整備が望まれます。

(構成/堀田栄治 撮影/宇佐見利明)