サービス部門の現場が抱える課題とは

 とはいえ日本の伝統的な製造業が、一足飛びにProduct as a Serviceの世界に向かうのは困難だ。「そこに向かうための準備がまだ整っていません」と鈴木氏は指摘する。実際、多くの製造業のサービス部門の現場を眺めてみると、これまでほとんどITの恩恵を受けてこなかった実態が浮かび上がってくる。

 顧客から電話やメールで連絡を受け、保守作業員を派遣しているが、いざ現場に到着してみると、当初予想していたものとは原因の異なる故障が起こっており、持参した交換部品では対処できず、出直しを余儀なくされるケースが珍しくない。メンテナンスに必要な情報が取得できていないのだ。そもそも保守作業員のアサインや、交換部品の在庫確認といった基本的な業務プロセスさえもシステム化されていない。組織で共有されない担当者間での電話連絡、現場に来て見なければ分からないホワイトボードへの手書き、両手で抱えきれないほどの紙の書類による報告など、アナログのコミュニケーション手段を使ったホウレンソウ(報告、連絡、相談)に頼っている。

 それでもこれまで何とかなっていたのは、熟練した保守作業員が経験を生かし、現場で臨機応変な対応を行ってきたからだ。だが、そんな熟練の保守作業員は高齢化しており、次々にリタイアしていく。製造業のみならずあらゆる業界で人手不足が深刻化している中で、熟練者に代わる若手を採用することはさらに難しく、技術の伝承もままならない。「これらの課題を一つずつ順に解決していく必要があるのです」と鈴木氏は強調する。

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製造業および資源業界でマイクロソフトがサポートできること

サービス部門の段階的な変革をサポートする
リファレンスアーキテクチャーを発表

 具体的にどんな順序でその課題を解決していけばよいのだろうか。鈴木氏が示すのは、次のようなステップである。

 まずは顧客先で稼働している自社の製品から、メンテナンスに必要なデータをしっかり取得できるシステムを整備する。次に、IoTで取得したデータを蓄積し、分析を行う体制を整える。「お客様先で稼働している製品の異常の有無をモニタリングするだけでなく、さまざまな予兆から、近いうちに特定部品が故障する可能性が高いといった、予防保守を実現するためのベースを作ります」と鈴木氏は説明する。

 保守作業員がより効率よく動けるよう、サービス部門の業務プロセスをサポートするシステム作りにも取り組む必要がある。「交換部品の在庫をERPで管理しているなら、その情報に保守作業員が簡単にアクセスできる仕組みが必要です。また、お客様先で発生した障害に対し、最適なスキルを持つ保守作業員を手配するタレントマネジメントや、熟練した保守作業員の知識や知見をサービス部門全体で共有できるナレッジマネジメントの仕組みも用意するのが理想的です」と鈴木氏は語る。

 ただ、上記のような仕組みやシステムを自前で最初から構築するのは容易なことではなく、膨大なコストと時間がかかってしまう。そこでマイクロソフトが提供を開始したのが、コネクテッドフィールドサービスのリファレンスアーキテクチャーだ。マイクロソフトは製造業のイノベーションに向けて、さまざまなデジタル技術適用のシナリオを提供することを予定しており、コネクテッドフィールドサービスはその第1弾となるものである。「サービス部門の業務を変革するためにどんな機能が必要となるのか。また、マイクロソフトやパートナーが提供するテクノロジーやソリューションをどのように組み合わせれば、その機能を実現できるのかを体系化し、包括的に提供するものです」と鈴木氏は説明する。