他責から自責思考への転換を促す

 それでは、外的自己認識を高めるにはどうすればいいのだろうか?

「方法自体はさほど難しくないのですが、リーダーとしてあるべき姿勢を抜本的に見直すこととなり、また、メンバーに弱みをさらけ出すなどの精神的な痛みを伴うため、本気度と覚悟が問われます」

 中竹氏は、日本ラグビーフットボール協会のコーチングディレクターとして、また企業の幹部育成に携わってきた経験から、自己認識を高めるポイントを指摘する。

「まず大事なのが、意識を『他責』ではなく『自責』へと転換することです。マネジメントする組織のパフォーマンスが低かったり、解決すべき問題があったりする場合、それを人員不足やメンバーの経験・能力不足など、自分以外に問題があると考えるのが他責。一方、すべての責任はリーダーである自分自身にあり、自らが変わらなければ解決しないと考えるのが自責。他責から自責へと意識を転換することが第一歩なのです」

 この最初の、しかし大きな転換ができるかどうかが大きな岐路となる。そして次に大事なのが、自らの弱みをさらけ出すことだ。

「メンバーに自分自身の改善点や問題点を指摘してもらう際に、自分を良く見せようとしたり、偽りの自分を見せたりしているようでは、本末転倒です。弱みも含めた自分のすべてをさらけ出すしかありません。そうでなければ、メンバーから率直なフィードバックを得ることはできないでしょう」

 とはいえ、実行は簡単ではない。途中で挫折したり、心が折れたり、せっかく何度か実行できたとしても、いつのまにか元の木阿弥になったりすることは珍しくない。そのような事態を見越して、中竹氏は、重要性をいやというほど繰り返し説き続け、入念に浸透を図っていくという。

「パソコンに例えれば、OSを入れ変えるような抜本的な変革です。きちんと稼働し続けるかどうかは、インストール時のマインドセット次第なのです」

 ただし、フィードバックを求める際は、注意点がある。いくら率直に言ってほしいといっても、部下は上司に遠慮するのが普通である。どの程度まで大丈夫なのかを心配して当然だ。だからこそ、曖昧な頼み事ではなく、正式に依頼することが重要である。なぜフィードバックが必要なのか、その理由をあえて最初に「宣言」することである。

 さらに、聞く相手もなるべく広く募りたい。家族や同僚にフィードバックを求めることはできても、苦手な人や滅多に会わない社外の人に求めることに抵抗がある人は多いはずだ。しかし、聞きやすい人に聞くだけでは、内的自己認識とのギャップはもちろんのこと、自分でも気づかなかった強みを発見することはできないだろう。

 だが、それは意外に難しいことではない、と中竹氏は語る。

「相手にフィードバックをもらうという行為を成功させるには、相手に関心を持っていること、相手にお願いすること、相手に貢献することができていなければなりません。こうしたことは、仲のよい人や身近な人に対してはごく自然にできているものです。苦手や疎遠な人に対しては、単にどれかができていないか、していても不十分だということです。」

 頼みごとをすると相手に借りをつくるような気持ちになってしまうかもしれないが、心配はいらない。人は本来、他者から関心をもたれること、頼られることを好ましく思う傾向がある。「苦手や疎遠な人に対しても、できている人にしているのと同じように働きかければ、応じてくれるはずです」

 さらには、メンバーからフィードバックをもらって思考や行動を変えるアプローチは、実はメンバーやチームを変革する方法としても使える。

「メンバーに働きかけて考えや行動を変えるのは難しい。ならば、フィートバックで得た『メンバーが求める自分』をまず振る舞うことで、メンバーやチームにポジティブな影響を与え、そこから変化を促す方が早い場合がある」(中竹氏)。

 周囲を変えるにはまず自分から。この黄金則は、自己認識なくして始まらない。他者からのフィードバックを得て、それを実現していくことで、周囲が感化され、自ら変わるカルチャーを浸透させていくことにつながる。