ウィーワークは、「人の仕事の仕方、暮らし方、成長の仕方」を変える目標を掲げた、破壊的変化をもたらす不動産会社であるかもしれない。ウィーワークの驚異的な成長に目を見張る人もいるだろう。だが、その成長には莫大なコストと投資が必要とされており、今後も必要となり続ける。

 さらに重要なこととして、この成長はIT企業のように利益を飛躍的に増大させることはない。IT企業の場合には、ブレイク後の売上高の伸びが利益と配当支払い能力の増大にもつながる。

 だが我々は、ウィーワークと同社の企業価値評価に対するその他の批判のいくつかについては、対応可能であると考えている。そしてそのためには、投資家がウィーワーク株に支払う金額を考え直す必要がある。

 ●資産と負債の期間の不一致に対する懸念

 ウィーワークは長期の契約により不動産を獲得し(債務の期間が長い)、短期の契約で物件の賃貸を行っている(売上が生じる資産の期間が短い)。これは、ホテルなどの不動産を基盤とするビジネスの多くにとって、一般的な特徴だ。

 このような期間の長さの不一致は、諸刃の剣である。

 リース費用がはるか以前に決定されており、うまくいけば高めの会員費をいま請求できるので、大きな利益を得ることが可能だ。だがそれは、最悪の場合には、ウィーワークを破産に追い込む可能性もある。なぜなら、同社の固定負債は現在340億ドルに達しており、これは何としても返済されるべきものだからだ。投資家は企業価値評価を適度に下げて、高いリスクに備えることができる。

 ●支配株主の株式よりも議決権の小さい株式の公募に対する懸念

 現代の上場会社の多くに共通する特徴として、種類株式の提供が挙げられる。議決権のない株式を購入する不安を和らげるため、株主は、フェイスブックやアルファベット、スポティファイに対して実施しているように、議決権と引き換えに企業価値評価を適度に下げることができる。

 ●創業者がウィーワークに自身の所有するビルを貸すといった、インサイダー取引に対する懸念

 我々は、経営陣の所有するベンダーが優先的サプライヤーになるといった状況は、上場企業に望ましくないと考えている。しかしウィーワークは、創業者であるCEOらが所有するビルをウィーワークに貸すというインサイダー取引を認めている。このため投資家は、この取引によって失われた可能性のある価値に見合うよう、企業評価を下げることができる。

 結論として、我々はウィーワークを、アップルやマイクロソフト、フェイスブック、アルファベットといったIT企業と同じカテゴリーに入れる気にはなれない。これらのIT企業が実行するお金を生み出す仕組みがウィーワークにはないのだから、IT企業並みの企業価値評価はふさわしくない。

 アナリストやマネジャーが真のIT企業とは何かを判断するうえでは、本稿で示したよりもホリスティックな枠組みを活用してほしい。アナリストは、いかに破壊的変化をもたらしていようと、すべてのスタートアップがIT企業であると見なしたり、IT企業並みの企業価値があると考えたりしないよう注意すべきだ。なぜなら、株主価値を決定するのは「IT」というラベルではなく、利益と投資利益率、そして配当支払い能力であるからだ。


HBR.org原文:No, WeWork Isn't a Tech Company. Here's Why That Matters, August 21, 2019.

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ビジャイ・ゴビンダラジャン(Vijay Govindarajan)
ダートマス大学タック・スクール・オブ・ビジネスのコックス記念経営学講座特別教授。The Three Box Solution(未訳)の著者。
 

アナップ・スリバスタバ(Anup Srivastava)
カナダ政府研究教授として、会計、意思決定、資本市場の研究を担当。カルガリー大学ハスケイン・スクール・オブ・ビジネス准教授。デジタル企業の評価や財務報告上の課題について研究している。