"いまここ"の自分を見つめ、
他者を通じて気づきを得る

 このように、セルフ・アウェアネスは、個人が幸福な人生を送る上でも、重要な要素だと言える。中原氏は「主観的幸福感」を規定する要因の重要度として最も重要なのは、学歴でも年収でもなく自己決定である、という西村和雄京都大学名誉教授による研究知見を紹介した。

「自己を理解し、自分で決められる人生が最も幸福なのは確かですから、経営学的にも、幸福な人生を送るためにも、セルフ・アウェアネスが重要、ということはわかっていただけるかと思います。ただ、問題は別のところにあります。『この世で一番遠い場所は自分自身の心である』という寺山修司の言葉がありますが、そもそも、みんな『自分が何か』わからないのです」

 ではいったい、どうすれば自分を見つけることができるのか。中原氏はセルフ・アウェアネスを高めようと、「自分探しの旅」に出るのは危険だと話す。

「自分探しって言いますけどね、見つかりませんよ。自分は『ここ』にいるんだから。これは、俳優・役所広司さんの言葉です。紛れもなく自分はいまここにいる、だから、どこか遠くに行くのではなく、"いまここ"の自分にこだわり、自分の"行為"に対して得た"反応"を振り返り、気づきを得ることがセルフ・アウェアネスを高める本質的な方法だと思います」

「自分は〇〇な人だ」という自分自身についての認識を、何らかの行為を経て、自分の持つ他者への影響力や、自分の強みや思い込み、自分の感情といったものに気づくことで、「自分は〇〇な人だ」という新たな自己認識を得る。このサイクルを繰り返すことで、自己認識は深まっていく。

 とはいえ、自分一人で自分自身を振り返るのは難しい。そこで必要なのが、他者を「成長の鏡」にしながら自分に気づくことだという。「自分にとっての自分は内面的自己、他者から見た自分は外面的自己です。この2つの間にはズレがある。他者からのフィードバックにより、他者の目を通した自己像を知り、そのズレに気づくことで、自己認識ができます」

 ただし、ここで気を付けるべきことがある。

「決して『ダメ出し』ばかりのフィードバックをしないこと。良いところも悪いところも両面のフィードバックがないと、自信を無くしてしまいます。この本の中には、様々なセルフ・アウェアネスに関する知見や実践事例などが紹介されているので、それを参照してみてください」。その後、会場では、中原氏が用意したワークシートを用いて、実際に内面的自己と外面的自己のズレを知るためのワークが行われた。

 リーダーシップの基盤となる非常に重要な要素であるセルフ・アウェアネス。中原氏は最後にこのように締めくくった。

「誰しも『自分が何者か』はわからないものですが、どこか遠いところに行けば見つかるものではありません。"いまここ"の自分を、時には他者からのフィードバックを求めながら、何度も何度も振り返り、自己認識を深めていくことを繰り返していくしかないのです」


2019年8月30日、東京・fabbit大手町にて開催。
※本イベントで行われた中原淳氏と中竹竜二氏の対談編は、9月26日・27日にダイヤモンド・オンラインにて公開予定。