満足度の「スイートスポット」

 数百社の十数年分のデータを検証した結果、高い従業員満足度(グラスドアの評価で4以上)と高い顧客満足度(ACSIの指数で80以上)を兼ね備えた「スイートスポット」の領域に、数社が当てはまることがわかった。

 旅行・観光部門では、サウスウエスト航空とヒルトンが最上位に入る。小売部門では、コストコやトレーダー・ジョーズがトップに名を連ねている。

 もっとも、意外な結果ではない。これらの企業の多くは、グラスドアに投稿される評価から、顧客と従業員の満足度の関連が随所にうかがえるのだ。たとえば、トレーダー・ジョーズの従業員は、次のように投稿している。

「顧客と楽しく接しながら、製品に関する質問に答えるように奨励されている。(中略)顧客に親切にすることは重要な課題だ」

 顧客と従業員の満足度が高い企業は、サービス業以外にもある。製造業のジョンソン・エンド・ジョンソンは、顧客と直に接する従業員が少ないにもかかわらず、両方の満足度が高い。同社の従業員は、グラスドアにこんな投稿をしている。

「私たちはチームプレイヤーだ。みんなで仕事をやり遂げ、みんなで顧客に仕える」

顧客ファーストの経済効果

 私たちはさらに、従業員の文化が顧客をより満足させるという側面から、企業価値に及ぼし得る影響を概算した。

 2006年に『ジャーナル・オブ・マーケティング』誌に掲載された研究によると、企業のACSIの顧客満足度のスコアが1%改善されると、総体的な株価が4.6%上昇するという統計的に優位な違いが見られる。これを私たちの分析データに当てはめた場合、グラスドアの企業評価が1ポイント改善されると、顧客満足度が改善されて、企業の長期的な市場評価は7.8~18.9%上昇すると考えられる。

 このように顧客至上主義は、企業にとって価値のある目標だ。ただし、顧客ファーストを推し進める一方で職場の士気が下がるような企業は、戦略が近視眼的で、お粗末だと言える。

 むしろ、顧客満足度と従業員満足度は、1枚のコインの裏表として考えるべきである。私たちは過去の研究で、企業が従業員のエンゲージメントと幸福を高める方法を提言している。それと同じような戦略が、今回の研究からわかったように、より幸せな顧客という結果にもつながる。


HBR.org原文:The Key to Happy Customers? Happy Employees, August 19, 2019.

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アンドルー・チェンバーブレイン(Andrew Chamberlain)
求人情報・企業評価サイト、グラスドアのチーフエコノミスト。グラスドア経済研究所研究部長。

ダニエル・チャオ(Daniel Zhao)
グラスドアのシニアエコノミスト兼データサイエンティスト。