従業員の満足と顧客の満足の関係

 従業員と顧客の満足度の関係を探るために、私たちは2つのデータ──グラスドアの従業員評価と米国顧客満足度指数(ACSI)──を組み合わせて検証した。ACSIは米国の消費者30万人の製品やサービスに関する意見を集計している。

 今回は13業界の大企業293社について、グラスドアの評価(1~5)とACSIの指数(0~100)の2008~18年の年間平均などに注目した。標準的なパネルデータ分析のモデルを用い、雇用主や年度、業界に関する要素を慎重に調整したうえで、グラスドアの評価がACSIの指数に与える影響を推測した。

 その結果、グラスドアの企業評価が1ポイント向上すると、顧客満足度のスコアは1.3ポイント向上することがわかった。これは統計的に優位な影響であり、従業員と顧客が密接かつ頻繁に接する業界では最大で2倍以上になった。

 同じテーマで似たようなデータを用いている他の最近の研究でも、ほぼ同じ結果が出ている。こうした研究は増えており、企業の経営者に重要な教訓を示している。顧客ファーストの戦略は、従業員の高い士気を維持することが、(それだけで十分ではないが)必要な前提条件になるのだ。

 ただし、私たちの観測データからは因果関係は証明できなかった。もしくは、従業員が満足すると顧客も満足するというより、顧客が満足すると従業員の満足度が上がるのかもしれない。それでもいくつかの理由から、結論には自信を持っている。

 まず、私たちのデータでは、従業員の満足度が先に上昇あるいは低下した後に顧客満足度が変わるパターンは多いが、その反対はほとんどない。次に、2つの満足度の関係は企業と顧客の違いによって変わるのではないかという疑問を考慮するために、同じ企業の顧客満足度と従業員満足度の変化を、パネルデータ分析を用いて検証している。そして、従業員の満足度が高いことは、顧客戦略が成功する主な理由ではなく、成功が予想される要因にすぎないとしても、有用な指標になる。

業界による違いと普遍的な課題

 今回の結果で特に注目すべき点は、従業員と顧客の満足度の相関関係が、より強い業界があることだ。

 たとえば、小売、食品サービス、ヘルスケアなど、従業員と顧客が日常的に接する業界では、グラスドアの企業評価が1ポイント向上すると、顧客満足度のスコアは3.2ポイント上がる。販売員、レジ、バリスタ、銀行の窓口係は、今回のデータのサービス業の中でも、特にその傾向が強い。彼らは分析の対象とした被雇用者のうちかなりの割合を占め、企業文化における彼らの個人的な経験が、(良いものも悪いものも)日常的に顧客に伝わる。

 対照的なのはソフトウエア・エンジニアと倉庫の従業員で、彼らは顧客と直接接することがほとんどなく、顧客満足度にもほとんど影響を与えていない(詳しい結果はこちらを参照)。

 一方で、IT企業や製造業者にとっても、従業員の満足度への投資は効果がある。これは販売やカスタマーサポートなどの顧客と接する部門だけでなく、バックオフィス部門にも通じる。

 さらに、職場のポジティブな文化の構築に投資する企業は、顧客と従業員の関係を改善する方法を見つけやすいはずだ。アップルはIT企業だが、実店舗で毎日大勢の買い物客と接しており、その経験がブランドイメージを後押ししている。