●周囲の態勢を整える

 愛する人の命が危ないとあなたに言われ、対応に困る人は多いだろう。どのように接することがあなたをサポートすることになるのか、明確に伝えよう。

 私は連休明けに、同僚数人と3日間のリーダーシップ集中講座を担当する予定が入っていた。受講者や他のコースリーダーのために、最初から最後まで参加する必要があった。

 そこで同僚の一人、リズに母の状況を説明し、他のメンバーにも伝えてほしいと頼んだ。そして、講座のあいだはそのことに触れたりせず、いつも通りに接してくれたらとても助かる、とも告げた。仕事に集中すべきときに慰められでもしたら、大泣きしてしまいそうだったからだ。別のシチュエーションなら、同僚に話を聞いてもらい、共感してもらうことで気持ちも落ち着き、助けになるかもしれない。

 ●プランBを用意する

 喪失の前後にかかわらず、いつ自分が家で必要とされるかは、はっきりとは予測できない。そのため、仕事のバックアッププランを立てておこう。

 ヘルプを求める人数は、自分の置かれた状況をどれだけオープンにするつもりがあるかによる。信頼の置ける同僚を1人だけ選ぶのか、上司と計画を立てるのか、仕事を小さく分けて大勢の人に少しずつお願いするのか。私が教えていた講座では、リズと相談し、講師陣の間のコマの割り振り、分科会の分担を決め、私が急に家に帰らなければならなくなったときのために備えた。

 ●4つの目で見る

 大きなライフイベントの渦中にいるあなたは、頭の中がいろいろなことで一杯だ。いつもの高いパフォーマンスが期待できないときだからこそ、余裕をつくっておきたい。

 大事な仕事は、同僚にダブルチェックを依頼する。大きなミスを防ぐことができるうえ、相手もあなたを具体的にサポートすることができて嬉しいはずだ。

 私は友人と母を亡くすまでの数週間、頻繁に何かを忘れたり、ミスをしたりしていた。友人とランチに行った先で、財布を忘れたことに気づいたこともあった。またあるときは、大事な業務提案書を提出する前に、同僚に条件を見直してもらったところ、ミスが見つかり、もう少しで2000ドルの損失を出してしまうところだった。

 失敗は、仕事をおろそかにしているから起こるのではない。人生の危機で記憶力や集中力が低下するのは正常な反応なのだ。

 ●「ヘルパー」を見つける

 自分がずっとそばについて看病したいと思っても、やらなければならない仕事もあるだろう。個人の問題で迷惑をかけ、仕事の能率が下がるこの時期は、罪悪感に苛まれやすいが、その気持ちを抱え続けるのはあまりにハードだ。

 自分がいないあいだ、愛する人の面倒を見てくれる友人を見つけ、やるべき仕事に集中できるようにしよう。母の元には頼もしい友人たちが訪れ、母の手を握り、母のために本を読んでくれた。

 ワーズワースの詩「水仙」や、『ジュリアス・シーザー』の中からマーク・アントニーの演説を読み聞かせてくれていることを知っていた私は、それまでよりも安心して急ぎの仕事に取り組むことができた。そして仕事に全神経を傾けられたことで、仕事を早く終わらせ、早く母の元に帰ることができた。

 ●断捨離する

 大切な人の死を予期したときは、物事の優先順位がはっきり見えるときでもある。うるさく感じていた情報配信を解約したり、そもそもなぜ自分が参加するのかわからない会議に出るのをやめたり、といったことが突然しやすくなる。この際、周囲への影響が小さいことなら、当面のことと断りつつ、惰性で続けてきた行動に永久に見切りをつけよう。

 良き人生には、喪失が付き物だ。私たちは人との関わりや経験を通じて豊かになる一方で、大切な人たちを失うことは避けられない。喪失を目の前にした自分自身と、はたすべき責任に配慮するゆとりをつくることは、長い目で見て、あなたの人生に心の安らぎ、精神的安定、喪失の受容という別の種類の前進をもたらすはずである。


HBR.org原文:How to Cope with Anticipatory Grief at Work, August 14, 2019

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サビーナ・ナワズ(Sabina Nawaz)
CEOおよびエグゼクティブへのコーチ、リーダーシップに関する基調講演者、ライター。26ヵ国以上で活躍し、フォーチュン500企業、政府機関、非営利団体、学術機関の最高幹部にアドバイスを提供している。TEDxを含む国際会議やセミナー、イベントなどでの講演数は数百回に上る。HBR.orgに加えて、FastCompany.comInc.comForbes.comにも寄稿している。ツイッター(@sabinanawaz)でも発信している。