以上を踏まえて、WFA制度、あるいは一般的にリモートワークを導入する際には、何を考慮すべきなのだろうか。以下の点をお勧めしたい。

・リモートワークを認める従業員を細かく管理しようとせず、十分な自己裁量と柔軟性を与えること。WFHとWFAの職員を比較した調査では、自己裁量が大きいほど生産性が向上した。

・WFAを導入する際には、一般によく使用されているテクノロジーを利用すること。我々の調査では、米特許商標庁が審査官に庁内共通のITツール(VPNやメッセージアプリなど)の使用を義務づけたところ、業務上、上司の決裁を仰ぐ必要のあるまだキャリアの浅いWFA職員の生産性は、さらに3%向上した。

・WFA導入後は、形成される従業員クラスター、特に同じ種類の仕事をしている従業員クラスターのメリットを活かすこと。定期的な顔合わせを行う費用を援助するコストは、学習効果のポテンシャルの大きさを考えれば安い投資だ。また、WFAの従業員クラスターが形成された場所で、順番にチームのオフサイトミーティングを行うのもいい。そうすればWFA従業員は、ホストとして在社勤務のメンバーとつながることができ、地元をチームに知ってもらうこともできる。

・我々の(熟練職員を対象にした)調査に基づけば、入社して間もない従業員には、しばらくの間、熟練の従業員と在社勤務をさせ、顔と顔をつき合わせた環境で発生する日常的学習のメリットを十分に得ることがベストだと思われる。我々が調査した熟練職員と同じように、新人職員にもWFAの生産性上のメリットがあるかどうかを判断するには、さらなる調査が必要だ。

・仕事のタイプ自体を考えること。主に一人でやる仕事――つまり、(特許審査官のように)他のスタッフとほとんど連携せずに遂行できる仕事――の場合には、WFAへの移行が生産性向上につながりやすい。独立性の低い仕事でのWFAの生産性効果を測るには、さらなる調査を要する。

 我々の調査から導き出せる重要な結論としては、その仕事が置かれた状況がリモートワークに適している――つまり、業務の独立性が高く、従業員が仕事を熟知している――場合、WFAの導入は企業にとっても従業員にとってもメリットがある。あなたの会社では、どの仕事がWFAに向いているだろうか。


HBR.org原文:Is It Time to Let Employees Work from Anywhere? August 14, 2019.

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プリトラージ・チャードリ(Prithwiraj (Raj) Choudhury)
ハーバード・ビジネス・スクール准教授。専門は「仕事の地理学」、すなわち仕事をする場所や移動性が知識労働者の生産性や仕事の成果に与える影響を研究する。また、地域格差の活用や働く場所を問わない人事制度など、企業が従業員の移動による摩擦を緩和し、価値を生み出す方法についても研究する。ハーバード・ビジネス・スクールで博士号を取得。インド工科大学およびインド経営大学院を卒業。ウォートンスクールにおいて教鞭経験がある。マッキンゼーでエンゲージメントマネジャー、マイクロソフトでリージョナルビジネスマネジャー、IBMでAIプログラマーを経て、学問の世界に入る。

バーバラ Z. ラーソン(Barbara Z. Larson)
ノースイースタン大学ダモーレ=マッキム・スクール・オブ・ビジネス経営学教授。研究テーマは、バーチャル環境で働くうえで必要な資質、対人スキル。生産的なバーチャルワークを可能にする教育手法やツールの開発を、学界および産学共同で行う。国際金融およびオペレーションリーダーシップにて15年のキャリアがあり、研究者に転向する直前には、米通信会社RRドネリーで国際金融ディレクターを務める。

シーラス・フォローギ(Cirrus Foroughi)
ハーバード・ビジネス・スクール戦略ユニット博士課程に在籍。ITと仕事の未来、すなわちITが可能にする働き方、ITによる能力格差の補完について研究する。進学前には、全米経済研究所およびフィラデルフィア連邦準備銀行で研究助手を務める。ダートマス大学卒業。