1.管理職を教育する

 協力的な上司、すなわち精神面でも実際的な面でも支えてくれ、ロールモデルとなり、創造力を活かして問題解決する力のある人の下で働く従業員は、仕事とプライベートのせめぎ合いが減ったと感じ、健康が増進し、職場でも家庭でも達成感が増した。

 なぜか。部下の視点からは、上司は企業内での地位の高低にかかわらず、組織を体現する人物だからである。

 上司はみずからの態度や行動を通して、部下が家庭生活を支援する制度を利用するよう促す(あるいは思いとどませる)力を持つ。その上司の言動が、家庭と職場に対する責任のどちらかを優先したり、両方を同じくらい大事にしたりするとどうなるか、というメッセージを送る(あるいは送らない)ことになる。部下の個人的な目標と相反するような期待を抱いている上司は、部下のワーク・ライフ・バランスに悪影響を及ぼすおそれがある(上司は若い世代に対して特に強い影響を及ぼすことが研究で示されている)。

 たとえば、キャリアと私生活の両方を大切にするジョンのケースを見てみよう。

 MBAを持つジョンは仕事量が多いため、地域社会に積極的に参加する時間をなかなか取れずにいた。規則上は、ジョンは(フレックスタイム制のような)制度を利用して、より深く地域社会の活動に携わりつつ、仕事を効率よくこなせるはずだ。しかし彼の上司は、彼が24時間年中無休で呼び出しに対応することを期待している。

 ジョンはいまの仕事が好きで、将来は昇進したいと思っているので、いつでも呼び出しに応じて上司に高く評価してもらうために、制度を利用しないことを選んだ。

 残念ながら、これは例外的なシナリオではない。むしろ、よくある話である。上司の支援度に対する質問に、我々の調査対象者の約63%がやや低い(5点満点で3.25以下の点数)評価をつけている。

 我々の研究結果に基づけば、従業員の健全なワーク・ライフ・バランスが、いかに組織に恩恵をもたらすかを管理職に教える企業は、正式な制度をつくることにしか興味がない企業よりも優れた業績を上げるはずである。

 組織はまず、管理職を教育して、自分のチームのパフォーマンスや家庭、個人をいかにサポートするか、そしてそれがいかに大切かを学ばせるとよい。仕事以外の活動を通じて、従業員はネットワークを広げられ、新しいスキルを身に付けられ、(私生活と職場での役割の両方で)より強い目的意識を得られるはずだ。