ケーススタディ(1)
自分に対する期待値を修正し、自分の仕事のやり方を変える

 クレーム処理と生産性管理の製品のプロバイダーであるセジウィックで、エンゲージメント・インクルージョン・CSRのバイスプレジデントを務めるエリッカ・デブルースは、3年前に母親になった。

「母親になると生活が一変すると頭ではわかっていましたが、息子が生まれるまで、それが本当のところどういうことなのか、まったく理解していませんでした」と、彼女は言う。

 彼女は産休から復帰する初日に、息子を保育所に車で送った。「私は駐車場から上司に涙ながらに電話しました」と、彼女は言う。「駐車場から動けなくなってしまったのです。私は気持ちがとても高ぶっていました」

 彼女は息子を預けることに徐々に慣れたが、そのときの経験から重要な教訓を得た。「いま私は必ず、(チームの)新米ママとパパに対して、復帰する前に保育所に2~3日預けるよう勧めています」

 エリッカは、仕事に戻った最初の数ヵ月間は悪戦苦闘していたと認めている。「何一つ満足にできていないと感じていました」と、彼女は言う。「常に急いでいるように感じました。息子を迎えに行くために急いで退社し、そして(息子を)急いで寝かしつけ、家でも仕事の続きをしようとしてしました」

 エリッカは立ち止まって考え直した。母親になる前の彼女は、自分自身を野心的かつ良心的で、仕事熱心だと思っていた。もちろん、彼女はいまでもそのすべてを備えていたが、息子が生まれたことで、自分のキャリア目標についての考え方をシフトする必要が出てきたと、彼女は悟った。

「私は、自分が何を成し遂げたいのか考えました」と、彼女は言う。

 彼女は上司と、自分が注力すべきところと、「私が貢献し価値を付加できる分野」について話し合った。

 彼女はまた、仕事のやり方と、仕事にまつわるパラメータを調整する必要があると気づいた。ある意味、彼女は「基準を高く設定しすぎていた」という。「私の正気を保つために、すべてのメールに即座の返信する必要がないことに気づきました。留守番電話を受けるやいなや折り返し電話する必要もないと気づいたのです」

 現在、エリッカは仕事と育児との間でのちょうどよいバランスを見出した。「自分に対して持っている期待を、自分の新たな日常(の文脈の中で)微調整する必要があると気づきました」と、彼女は言う。

ケーススタディ(2)
他の人と一緒に期待を設定し、一方で融通の余地は残しておく

 コートニー・ラザーリは、2014年に初めて産休に入ったが、それは多くの変化をともなうものであった。

 EYのパートナーであるコートニーは、産休中に、ニューヨークからテキサスに転勤になり、新たな役割に昇進した。「私は新米ママになり、新しい街で、新しい仕事を担当していました。当時は、『どの移行もいっきにやってしまおう』と思っていました」と、彼女は笑いながら言う。

 コートニーは職場復帰に向けて準備する際に、自分の新たなポジションで成し遂げたいことを検討した。また、EYにおける自分のアイデンティティについても顧みた。

「ニューヨークでは、(同僚は)私と私の勤労意欲をわかっていました」と、彼女は言う。「ヒューストンの同僚にはそのような予備知識はありません。私は、周囲に私のことをよく働くと思ってもらいたいと思いました。優先順位が変わってしまった人だと見られたくなかったのです」

 彼女は仕事に復帰すると、上司と直接会話を持ち、仕事に対する自分の目標について話し合った。また、期待に関しても話した。上司が彼女に期待することと、彼女が母親としての生活に順応するうえで組織に提供してもらいたいサポートの両面である。

 コートニーは、会社と自分の仕事に対するコミットメントを表明した。だが、かつてよりも融通のきく勤務態勢が必要だとも認識していた。「譲れない条件の一つは、どんなときでも息子を医者に連れていけることでした。あらかじめ予約を入れてあった場合はもちろん、急に熱を出したという場合でもです。自分が何をしていようとも切り上げて退社する、とはっきり上司に伝えました」

 また彼女は、自分のスケジュールと、自分の1日の組み立て方についても上司に話した。当初は、勤務を午前7時に開始し、午後3時には退社して息子との時間を過ごせるように計画していた。その後、夜に息子が寝たらふたたびログインするよう計画を立てた。

 コートニーはこれをしばらくこなした。だが、通勤に片道1時間かかる彼女はじきに、このスケジュールは持続不可能だと思った。いまでは、「週に2日は自宅勤務にしています」と、彼女は言う。「その日は、母としてより長い時間を過ごせています」(いま彼女には娘もいる)

 それでも彼女は、自分のかつてと同じ働き方を再開しようと試みてよかったと思っている。長くは続かなかったものの、自分がいまでもキャリアを重ねていきたいのだと再認識させてくれたからだ。

 彼女は次のように助言している。「よくない決定を自分に無理強いしてはなりません」


HBR.org原文:How to Return to Work After Taking Parental Leave, August 02, 2019.

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レベッカ・ナイト(Rebecca Knight)
ボストンを拠点とするジャーナリスト。ウェズリアン大学講師。『ニューヨーク・タイムズ』紙や『USAトゥデイ』紙、『フィナンシャル・タイムズ』紙にも記事を寄稿している。