ゲイルのケースは極端に聞こえるかもしれないが、彼女が得たような充実感やパーパスを得るのに、なにも危機的瞬間が訪れるまで待つ必要はない。まずは、あなたの目指す「北極星」――仕事をしていくうえでの信条、伸ばしたい能力や発揮したい強み――を明らかにしよう。それを、あなたの仕事人生の羅針盤だと考える。

 保険会社のシニアエグゼクティブ、マーシーがインタビューで話してくれた。「守勢に回るということは、いつもびくびくして、受け身になっているということです。そこから脱出するには、自分が何者で、何をやりたいかを明確にして、そこに到達するための道筋とネットワークをつくり始めるしかありません」

 この先の1ヵ月間の予定に入っている仕事およびプライベートの約束は、あなたを北極星に近づけさせてくれるものだろうか。それとも遠ざけるものだろうか。コラボレーションの相手は、同じ価値観を持つ人や新しい視点を与えてくれる人だろうか。どんな人と一緒にいると成長していると感じるだろうか。ポジティブな人、分析的な人、穏やかな人、野心的な人。

 このエクササイズの目的は、職場で個人的に気に入っている人や親しくなりたい人ではなく、どのリレーションシップや交流に充実感やモチベーションを感じ、どれがあなたのパーパスに沿っているかを理解することだ。

 目指す北極星と、そこに到達する助けとなるリレーションシップが明確になったら、今度は意識して時間を配分する。

 あなたにやりがいを与え、あなたを意義から遠ざける人間関係から守り、成長させてくれる人との関わりに積極的に根を下ろす。ゲイルは価値観を共有し、自分に嘘をつかない信頼できる友人や、新しい視点を与えてくれる「ブレーン」、知識不足を補ってくれるその道の達人など、重要なリレーションシップを見極め、育む努力をしている。

 仕事以外で意味深いリレーションシップに投資することは、きわめて重要だ。我々の調査でも、成功している人は仕事以外の少なくとも1つか2つのコミュニティに根を張っている、という結果が繰り返し出ている。

 これは単なる憂さ晴らしや、夜一人で読書するのとは違う。時間をかけたいと思うものを決め、一緒にやる仲間を見つけよう。メンバーと目標を決めれば、持続する理由もでき、なおよい。

 仕事以外のことに時間をつくると、生活が充実するだけでなく、心身のエネルギーを維持するのにも役立つ。仕事以外の人との関わりは、視野を広げ、仕事の好不調に振り回されずに自分らしさを発揮できる。

 自分を育てるリレーションシップに根を下ろすのと同様に重要なのが、疲れる人間関係に時間を奪われないようにすることだ。自分のスケジュールを100%コントロールできる人は少ないが、自分の時間をガードすることは案外できるものだ。

 ナレッジワーカーのほとんどは、1日の85%の時間を会議、あるいはメールや電話によるコミュニケーションに費やしている。ミーティングに明確な目的を持たせることで、この過重コラボレーションからわずかだけでも時間を取り戻せたら、その分を自分の糧になるリレーションシップに投じることができる。

 他にも、時間をガードするよくある方法としては、メールチェックや電話を掛けるときのルールをつくる、休暇やお楽しみプロジェクトなどのためにあらかじめスケジュールをブロックしておく、どんなに忙しくても必ず決まった時間に帰る、などがある。

 インタビューをした大手IT企業に勤める同僚カップルは、会社からの帰り道、ある目印の場所を過ぎたらそこからは仕事の話をしない、というルールをつくった。仕事の関係からプライベートな関係にシフトする、きっかけが必要だという。こうしたガードを設けることによって、習慣や周囲の状況に流されずに、主体的に時間の使い方を決められるようになる。