人と連携するAIはエンドユーザーが使いこなせないといけない

――何故、PRINTEPSだったのでしょうか。統合知能を開発した理由は何ですか。

 ディープラーニング一辺倒のAIアプリケーションは、ある意味、単一知能です。人間というのは、いろいろな知能を連携させていますから、それに迫るものをつくりたいという思いがありました。統合知能ですと、結論に至った理由も説明できて、人との連携も可能になります。

 現在、最大のAIアプリケーションは自動運転です。カリフォルニア州が公表した自動運転テストの実績結果によると、AIが自動運転を開始してから、運転するには難しい状況になって「この状況では、私は運転できません。代わってください」と人のドライバーに依頼して運転を離脱するまでの走行距離が最も長かったのはグーグル系のウェイモで、約1万8000キロメートルでした。日本勢は日産自動車の6位が最高で、約300キロメートル。両者の間には60倍もの安全性の差がありました。

 また、トップ10のうち、1位から4位までは米国のスタートアップで、5位は中国のPony.ai。バイドゥ(7位)、Roadstar.AI(10位)と合わせて、3年前には1社もエントリーされていなかった中国企業が3社も入っていました。国家資本主義という言い方もされますが、中国は国を挙げてスタートアップを支援することで、AI分野の研究開発において、わずか3年で日本や欧州を抜き去り、米国に迫るまでに存在感を高めました。このことはGDPにもかかわる問題として、非常に懸念しています。

 自動運転車に載せるAIは、データ量によって性能が決まります。単一知能としてのディープラーニングの社会実装では、残念ながら日本は米国や中国には追いつけそうにありません。ですから、それとは違う道として、ヒューマンセントリックAI、人と連携するAIの領域で、独自の道を切り開いていくことが考えられます。この研究領域は、まだ研究は大きくは進んでいないので、優位性を築き、新たな観点からGDPを拡大できるのではないかと期待しています。

――人と連携するAIのカギは。

 ITエンジニアと連携するのではなくて、実際に業務をやっているエンドユーザーと連携する必要があります。そこで、PRINTEPSはエンドユーザーが使えるツールを目指しました。エンドユーザーはプログラミングをあまり理解していませんから、日本語で自分の業務プロセスや業務知識を書き込むことで、ワークフローが構築され、最終的にはこれが、ROS(Robot Operating System)上で実行可能なPython(パイソン)のソースコードに自動変換されます。その仕組みを小学校でのロボット授業、およびロボット喫茶店・レストランに実践しています。

 エンドユーザー向けのAIをつくらない限り、人とAIが連携することは難しいと考えています。PRINTEPSのソースコードは4年間で10万行を超え、大規模AIシステムとして英国の科学雑誌にも取り上げられましたが、目指すところは、1億人の日本人全員が日本語で自分の業務フローや知識を書いて、それがそのままAIロボットに継承されていく未来社会です。