家族はチーム

 要求の厳しい仕事を持つ人は、仕事に没頭しがちで、家庭で過ごす時間の優先順位が下がりやすい。これを克服するためには、家族やパートナーに対して、仕事のチームと同じくらい真剣に向き合う必要がある。

 そこで、家族というチームに名前をつけることは、考え方を変える楽しい方法になるだろう。家族はチームだと意識することによって、「自分の仕事か相手の仕事か」という対抗意識がなくなり、むしろ仲間だと思えるようになる。

 私が助言をしたあるリーダーと妻(それぞれ優秀なキャリアを積んでいる)は、家族の姓にちなんで「チーム・クイン」と命名した。別のカップルは「Go Bersteins Go(行け、バーンスタインズ家)」の頭文字で「GBG」と呼んでいる。

 チーム名をつけることによって、これまで以上に、日常生活の問題をともに解決するパートナーとして互いを認めるようになる。仕事の同僚と同じだ。

 チーム・クインは、仕事や子どもの活動、家族での外出など、家庭のスケジュールを一元的に管理するようになった。これによって、共働きカップルが、2人とも同じように仕事をできないときに抱きがちな不満を減らすことができた。

気楽に「ノー」を言える人になる

 あなたもパートナーも、それぞれキャリアップを重ねるうちに、職場での影響力が大きくなり、日常の業務を超えた要求が増えるかもしれない。クライアントとの食事に同席を求められ、役員に名を連ね、イベントで講演をし、後輩のメンターになる。

 いずれもやりがいはあるが、時間とエネルギーが必要だ。仕事と生活の健全なバランスを保つために、気楽に「ノー」を言えるようになりたい。とはいえ、要求を断るタイミングを見極めることは、簡単ではない。

 私のあるクライアントのケースを紹介しよう。専門職に就いている彼女は、息子の学校の評議員になろうと考えていた。息子の教育を支援する活動に加わりたかったし、同僚の多くが同じような役職を引き受けていたからだ。

 しかし、この問題について彼女と話し合ううちに、彼女にとって「やりたいこと」以上に「やるべきこと」になっていることが明らかになった。実際に引き受ければ、すでに窮地に陥っている家庭生活が、さらに追い詰められるだろう。

 そこで、彼女は自分の選択の付加価値を考えた。評議員になれば、仕事以外の時間をほかの保護者や教師と過ごすことができる。あるいは、その時間を、息子との充実した時間にすることもできるだろう。

 彼女と夫は後者を選んだ。自分たちにとって何が大切なのかを夫婦で率直に話し合ったおかげで、スケジュールを調整し、家族全員にとって最善のかたちで息子と過ごせるようになった。

 最高の自分を維持するような仕事と生活のバランスを見つけるためには、同じような努力が必要になる。仕事などの依頼を引き受ける前に、次のように自分に問いかけて、その選択の付加価値を慎重に考える。

・あなたにしかできない付加価値が生まれることか?
・あなたが参加することによって価値が生まれるか?
・パートナーと家族のチームにどのような影響を与えるか?

 現実として、あなたもパートナーも、すべてをやることはできない。だからこそ、引き受ける依頼がひとつひとつ、大きな付加価値をもたらすようにする。

互いの強みと興味を活かす

 共働きの2人にとって、家事や家族の責任をうまくこなすことは、終わりのない戦いだ。特に、仕事と家庭における役割が増えるにつれて、誰が何をやるかという戦略と規律が必要になる。

 そこで救いの手となるのが、それぞれの強みと興味に応じて責任を分担することだ。私が助言したあるカップルは、家事の分担をめぐるストレスでたえず衝突していた。緊張を和らげるために、彼らに家事のリストをつくってもらった。

 まず、食器洗い乾燥機から皿を出すことや請求書の支払い、子どもの習い事の送り迎えなど、すべてのタスクを書き出す。続いて、各項目を「かなりイヤ」「苦にならない」「楽しい」に分類する。こうして、それぞれの強みと興味をもとに分担を見直したところ、2人の緊張は劇的にやわらいだ。それぞれの能力を最大限に活用できるようになり、家族と過ごす時間も大幅に増えた。

 あなたがつくったリストの中に、重要だが、あなたもパートナーも「かなりイヤ」だと思う項目があれば、外注することもきわめて有用な選択肢の一つだ。

「今後の見通し」を定期的に話し合う

 あなたとパートナーのどちらのキャリアを優先させるか、希望をすり合わせて決断を下さなければならない時期は必ず訪れるだろう。それに備えて、共稼ぎカップルは常にコミュニケーションを取る必要がある。

 簡単な方法として、今後の見通しを定期的に話し合い、近い将来の予想に合わせて計画を立ててみよう。自由で率直なコミュニケーションの機会になり、キャリアの変化や仕事のプロジェクト、目標について大きな決断を下す際に、互いに積極的に関わりやすくなる。

 たとえば、次のようなタイミングで話し合うこともできる。あなたとパートナーにとって最適のペースを選ぼう。

年1回:年に1回、今後の予定を確認して、休暇や学校行事、カンファレンスなど、重要なイベントの調整をする。
・四半期に1回/月1回:月に1回、次の旅行や仕事の締め切り、忙しくなる時期について計画を立てる。
・週1回:週に1回、数日分の予定を話し合い、予想外の出来事や互いの不満を最小限にする。

 あるクライアントは、週1回の話し合いが自分と妻の協調関係を維持するために欠かせないとわかった。

 毎週日曜日の朝食時に、2人はそれぞれノートPCを開いて1週間の予定をざっと確認する。誰が何をやって、誰がどこに行くか。2人は常に協調して重要な最新情報を共有しやすくなり、日曜日の充実したひとときを待ち望むようになった。

 2人が同じ認識を持つだけでなく、今後の見通しを共有することは、互いに助けを求める貴重な機会になる。あなたが重要なプレゼンテーションを控えて準備の時間が必要な場合や、パートナーが特別に忙しい1週間になりそうだというときに、このような話し合いを持てば、2人も計画と準備ができる。予想外のことが起きても(必ず起きるものだ)、相手の予定を把握できているから、より柔軟に対応でき、試練を迎えたパートナーを支えられる。

「タイムゾーン」と「ホームゾーン」をつくる

 仕事と家庭の明確な境界線を維持することは、共稼ぎカップルの場合は特に難しいだろう。私のクライアントの多くも、自分が働いているときに家庭で起きていることに対して罪悪感を抱き、家にいるときはPCを開いて仕事を終わらせたい衝動と戦っている。

 この悪循環を断つ一つの方法は、「タイムゾーン」と「ホームゾーン」をつくることだ。

「タイムゾーン」は、生産的に仕事をする時間をブロック単位で考える。これによって、あなたとパートナーが仕事について話し合う時間を設けやすくなり、あらゆる会話に仕事が絡まなくなるという効果もある。

 たとえば、私がコーチングをしたある専門職の女性と夫は、土曜日に次のようなタイムゾーンを決めた。

・午前9~10時:一緒に朝食をとる(朝食に集中する)
・午前10~12時:どちらか一人が仕事をする(タイムゾーン1)
・午後1~3時:もう一人が仕事をする(タイムゾーン2)
・午後3時以降は友人や家族と楽しむ

「ホームゾーン」は物理的な空間のことで、ちょっとした仕事やメールの確認をする場所を自宅内で決める。書斎など特定のスペースを仕事用にレイアウトすれば、仕事と家庭の明確な境界線にもなり、パートナーの状況を予想しやすくなる。ホームゾーンにいるあいだは、その人の時間は家庭生活から守られている。

 仕事と家庭は対立するものではないことを、覚えておこう。仕事と家庭は人生の異なる一面であり、互いに情報を提供し合い、影響を与え合うものだ。

 共働きカップルが、それぞれ最高の自分でいることができる関係を築くためには、自分たちのOS(オペレーティングシステム)を折に触れて検証する必要がある。自分たちの意図にもとづいてOSを適宜更新することによって、共稼ぎの生活がもたらすさまざまな機会を、さらに活用できるだろう。


HBR.org原文:Finding Balance as a Dual-Career Couple, July 29, 2019.

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エイミー・ジェン・ス(Amy Jen Su)
エグゼクティブのコーチングとリーダーシップ育成を手がけるパラヴィス・パートナーズの共同創業者兼マネージング・ディレクター。最新の著書はThe Leader You Want to Be(未訳)、ミュリエル・マイグナン・ウィルキンスとの共著Own the Room(未訳)もある。ツイッターは@amyjensu