●時間とお金のトレードオフに関する全体像

 時間を重視することをいかに多くの人たちに奨励するかが、いまほど重要であったことはない。

 人々はかつてないほど「時間貧乏」になっている。北米に住む250万人を対象にした調査で、80%の人が日々やりたいこと、あるいはやらなければならないことのすべてをこなす時間はない、と回答している。この調査によると、時間に関するストレスは、失業中であることよりも幸福感に大きな悪影響を及ぼす。

 時間やお金をどう重視するかは、社会としての幸福感にも影響を与える。我々が分析した世界価値観調査(80ヵ国から22万人が参加する代表的な調査)のデータでは、仕事よりも余暇を重視する国民の割合が高い国ほど幸福度は高かった。時間を重視することは、所得の高い国でも低い国でも同様に、2008年の経済危機のような財政的ショックが心理に及ぼす悪影響からも国民を守った。したがって、経済的不安を軽減すべく学費ローンを帳消しにするといった、人々が時間を重視できるよう後押しする政策は、世界中どの国でも有効である。

 時間と金のどちらを優先するかを決める場面は、人生で数多くある。時には、選びたいほうを選べないこともあるだろう。給料のよい仕事を選ばなくてはならず、友人や家族と一緒に過ごす時間を犠牲にせざるをえないこともあるはずだ。誰もがお金よりも時間を重視する選択肢があると感じられるよう、社会はいっそう努力する必要がある。

 いずれにせよ、お金と時間のどちらを重視するかを選べる場合、データが示す結果は明らかである。時間を重視すれば、短期的にも長期的にも、より大きな喜びが得られる可能性が高い。

 冒頭に登場したジャスティンは結局、通勤時間が長くて給料の高い仕事を選んだ。2年後、彼は裕福になったが、離婚して不幸だと感じていた。どちらかを選ぶ自由があるときは、収入よりも時間を優先した場合に何を得られる可能性があるか、一度考えてほしい。


HBR.org原文:Are New Graduates Happier Making More Money or Having More Time? July 25, 2019.

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アシュレー・ウィランズ(Ashley Whillans)
バーバード・ビジネス・スクールの交渉・組織・市場ユニット助教授。時間、お金、幸福を中心に研究。