●単に両親が裕福であるとか、好きなものが多いということなのか

 お金よりも時間を重視する学生は、両親が裕福だったり、物質主義者ではなかったりする、とも考えられる。この説を確かめるために、学生たちに両親がどれくらい裕福で、魅力的な物品を所有することをどの程度重視するかについて尋ねてみた。両親の財産の多寡や、魅力的な物品を所有することに対するこだわりの度合いにかかわらず、時間を重視する学生たちは、1~2年後に幸福度が高くなるキャリアパスを選んだ。

 ●経済的な安定を感じるときは、時間に目を向けるのが容易

 前述の発見を、時間とお金のどちらをより優先するかを決める際、経済的要素は影響を及ぼさない証拠だと見なしてはならない。時間とお金のどちらをより優先するかという人生の大きな決断を下すときに、経済的に安定していると感じられることはきわめて重要なのだ。

 経済的な安定を感じるには、多くの要素が絡んでいる。その点で、所得の不平等に似ている。

 格差の大きな地域に住んでいる人々は経済的な安定を感じられず、それゆえにお金を重視する傾向にある。お金をめぐるいざこざのあった家庭で育った人たちも、大人になると(時間よりも)お金を重視する傾向がある。現在は裕福になった場合でも、そうである。幸福感を犠牲にしても、時間よりお金を選ぶ人がいる理由は、これらの事情で説明できる。

 もちろん、借金も影響を及ぼす。明らかな金銭的制約がある人々は――高額の借金を抱えて卒業する学生のように――(時間よりも)お金を重視する傾向がある。我々が研究を行ったカナダでは、米国の学生に比べると卒業時に学生が抱える借金ははるかに少なくて済む。この研究の結論は、借金の負担が高い地域では、一般論として適用できないかもしれない。

 さらに、人は年を重ねるにつれ、経済的に安定していると感じて、時間を重視する傾向がある。これは、人の考え方がその時々で変わりうることを示唆している。

 我々の研究では、卒業前に時間を重視すると答えた学生のうち半数近くの人たちが、卒業後の追跡調査でも、お金より時間をいまなお重視していると答えた。しかし、人の人生における優先順位がどのように変わるかを理解するためには、さらなる研究が必要だ。

 概して、なぜ時間を重視する人と金を重視する人がいるのかを理解するためには、もっと研究が必要である。また、結婚や子どもの誕生といった他の大転換期に、お金よりも時間を重視したらどのような影響が生じるかを理解するうえでも、さらなる研究が必要である。