●ケーススタディ1:他の相談相手を見つけさせる

 アリーヤ・ジョーンズとカルロスが同じチームで仕事をし始めて2年少し経った頃、2人が勤める大手会計事務所が他所と合併した。「ご想像の通り、皆の生活が一変しました」とアリーヤは言う。

 事あるごとに、カルロスから仕事が増えたことに対する不満を聞かされるようになり、アリーヤはそれに同調した。「間違いなく一緒になって文句を言っていましたね」

 ところが、アリーヤが親身になって話を聞いてくれるとわかると、カルロスは他のことについても愚痴をこぼすようになった。引越しが大変、きょうだいが病気になった――。「いろいろなことがあったようです。私の手に余るようになりました」

 2人がカルロスの私生活について話す時間が「異常に長く」なり、2人とも「仕事がおぼつかなくなった」とアリーヤは言う。

 アリーヤは少し距離を置く必要を感じたが、それを実行する勇気を奮い立たせていたちょうどその頃、カルロスが自動車事故に遭い、数週間仕事を休むことになった。アリーヤは、カルロスが自分の助けをどれくらい必要とするだろうかと心配している自分に気づいた。「カルロスが持っている私の"傾聴貯金"は、そのときすでにオーバーしていると感じていましたが、私の生まれつきの同情癖で彼のそばにいてあげなければ、と思ってしまったんです」と彼女は説明する。

 そんなとき、別の同僚に脇へ呼ばれ、アリーヤが頻繁にカルロスと電話で話していることが「ほんとうに心配」で、親切もほどほどにしたほうがいいと忠告された。それを聞いた彼女は、今度こそどうにかしなければ、と確信した。

「どうしたら巻き戻せるんだろう」。そう考えたアリーヤは、次にカルロスからかかってきた電話で、職場以外の友人や両親に相談してみるよう彼に助言した。また、「彼の同意を得て、彼の上司に彼には休暇が必要だと伝える」と、責任の一端が彼女から会社へ移行した。

 カルロスは、意外にもすんなりと受け入れた。「他の人に助けを求めさせて、本当に正解だったと思います」

 その後、彼が職場に戻ると、彼女はさらに新たな境界線を引いた。カルロスの電話に毎回出るのをやめ、彼が残した留守電にメールを返すようにした。カルロスが席にやって来たときには、仕事が忙しいからメールして、と伝えるようにした。

「彼が何でもかんでも相談してくるのは、私が自分の味方であることを確かめたくてやっていることだとわかったので、いまはその確信を持たせるだけでいいと思っています。そのおかげで、ずいぶんバランスの取れた関係になりました。彼はもっと強い人間だと思えるようになりましたし、彼も私を信用していいのだと思ってくれています」