『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』では毎月、さまざまな特集を実施しています。ここでは、最新号への理解をさらに深めていただけるよう、特集テーマに関連する過去の論文をご紹介します。

 2019年9月号の特集タイトルは「時間と幸福のマネジメント」である。

 今日、時間にゆとりがあると感じる人の割合は、過去最低水準にある。経済性を優先してしまうのは、太古の昔からお金を重要な道具としてきた人類の特質かもしれない。だが、その働き方は持続可能か。みずからの価値観や幸福につながる時間の使い方を考えてみたい。

 ハーバード・ビジネス・スクール助教授のアシュレー・ウィランズ氏による「時間とお金の幸福論」では、お金ではなく時間を大切にする考え方に転じるために、今日からでも取り入れられるいくつかの手法を紹介する。時間にゆとりがあると感じる原因は長時間労働にあると思われるかもしれないが、実際には自由裁量時間は増えている。では、なぜ時間がないという感覚が強いのだろうか。調査によれば、お金が幸福をもたらすと考え、稼ぐために時間を使うという罠に、多くの人がはまっているためである。 

 ミネソタ大学カールソン経営大学院教授のキャサリン D. ボース氏による「人類はなぜお金に支配されてきたのか」では、その問いの答えを歴史的な視点からひも解く。お金は古い昔から人間にとって、とりわけ重要な道具だった。しかし、お金が絡むと、人間関係の大切さよりも自分の気持ちや欲求を優先しがちになる。事実、筆者の調査によれば、お金が関係すると、熱心にタスクに向き合うが、助け合う気持ちや共感する気持ちが低くなるという結果が出た。筆者は、物々交換によって発展してきた人類の歴史に触れ、これを経済性の追求という特質に結びつけている。

 アシュレー・ウィランズ氏らによる「時間が生む幸福感をお金に換算する」では、時間とそれが生み出す幸福感を、金額で定量化する調査を積み重ねた。これにより、時間とお金の二者択一でお金を諦めるのは損失ではないと、理解してもらえる。すなわち、時間を効果的に使うと、世帯年収が増加した場合と同じように幸福感が増す。

 カリフォルニア大学ロサンゼルス校アンダーソンスクール・オブ・マネジメント准教授のキャシー・モギルナー・ホームズ氏による「幸福感を高める週末の過ごし方」では、週末を休暇と見なす方法を提案する。米国人も休暇を取るのが下手だという。週当たりの労働時間が多いうえ、法律でも有給休暇の付与日数が定められていない。週末を休暇と見なすことでルーチンや雑事から意識を外し、目の前の楽しみに集中するよう視点を変えれば、週明けの月曜日の幸福感が増すという。

 カルビー常務執行役員人事総務本部長の武田雅子氏へのインタビュー「挑戦する組織に向けて『楽しく働く人』を増やす」では、「楽しく働く人を増やす」という信念を強め、「価値創造に向けた挑戦ができる」組織づくりに邁進する武田氏に、セルフマネジメントの秘訣から最近の取り組みまでを聞いた。武田氏のこれまでの人生は必ずしも順風満帆だったわけではない。前職時代の30代半ば、広い職掌範囲を任されたタイミングで、がんが発覚。人生を左右しうる出来事が同時に降りかかった。

 メディヴァ代表取締役社長の大石佳能子氏による「医師の『働きすぎ』を仕組みで解決する」では、医師の働き方を改善するだけでなく、働きがいを高めるために実施した取り組みが紹介される。医師の労働環境はあまりに過酷である。泊まり込みでの早朝深夜の対応は当たり前で、満足な休養を取れない人は多い。医師としての使命感だけで乗り越えられるものではなく、心身の健康を害したり、医療の世界を離れたりする人もいる。メディヴァの大石佳能子氏は、そうした現状に大きな問題意識を抱き、患者のニーズを満たしながら、医師の働き方を根本から変える医療変革に力を注いできた。「『赤ひげ先生』を仕組みでつくる」という目標を掲げる大石氏は、長時間労働が常態化して「働きすぎ」という自覚を持つことすら難しい世界を、どのように変えてきたのか。