●まず、自分が嘘をついた理由を振り返る

 グレッグにデータを粉飾した理由を聞くと、そうするしかない気がしたという。「私は営業部で一番新しい社員だった。誰もが私の失敗を期待していて、自分がよそ者だと感じていた」。チームの一員になりたいと思うあまり、無理をしてでも受け入れてもらおうとしたのだ。

 不誠実さは、思いつきの振る舞いではない。嘘の根底には満たされない欲求があり、嘘をつけば満たされるかもしれないと考えるのである。その欲求が何かを自分で理解することは、もっと健全にそれを満たす方法を見つけるための第1歩となる。

 最近、仕事で嘘をついたときのことを思い出してみよう。

 あなたは自分が上司に見過ごされている、あるいは不当な判断をされたと思ったのか。自分のミスが、事情を考慮されずに厳しく批判されるだろうと不安だったのか。「ミスから学ぶ」という会社の方針は上司の「お気に入り」だけに許されて、自分は当てはまらないと思っているのか。あるいは、あなたはもっと大きな組織的問題に立ち向かっているのだろうか。

 人が組織の中で嘘をつきやすい要因について、私は15年にわたり研究してきた。そして、嘘を助長する環境を意図せずにつくり出している企業もあることがわかった。たとえば、自分の仕事が公平に評価されていないと感じると、不誠実な言動を取る確率は約4倍高くなる。

 動機は何であれ、自分が嘘をついた理由を言い訳抜きで思い出してみよう。嘘をついたことを正当化して、自分の中でくすぶっていた恥じる感情を和らげたいという誘惑に駆られるかもしれない。「公平ではない」「自分には……の価値がある」「そうせざるを得ない理由があって」といった視点は、いずれも偽りを正当化するための弁解である。

 自分の嘘を弁護していることに気がついたら、それは、その奥にある感情を避けているという明らかな兆候だ。言い訳をするのではなく、自分にこう問いかけよう──嘘の奥にある、どのような不安を守ろうとしているのか?

 忘れてはならない。不誠実さは、他人から見れば、偽りが露呈したにすぎない。

 ●続いて、信頼性を損なうことのダメージを予想する

 簡単にできることではないが、嘘によって周囲がどの程度、自分を信頼しなくなるかを、正確に把握することが重要だ。

 周囲の反応に注意を払おう。以前ほど意見を求められなくなったか。あなたの発言に対する関心が以前とは違うか。信頼が少しずつむしばまれている場合、あなたの専門分野と一致するにもかかわらず、会議に呼ばれなくなったり、プロジェクトへの協力を頼まれなくなったりしているかもしれない。

 自分に対する信頼が薄れている兆候に気がついたら、信頼を取り戻そうと、さらに嘘をつこうと思うかもしれない。これは自然な本能だが、嘘の悪循環が続くだけである。

 ダメージを小さくするためには、我慢しなければならない。本能に従うのではなく、自分が求めている評価と実際の評価のギャップを理解しよう。

 あなたは優れたアイデアを持っていて、コミットメントを果たす人だと思われたいのだろうか。困難な問題も解決できる、頼れるリーダーだと思われたいのだろうか。このギャップを明確にできれば、自分の評価を操作するという不誠実さが、自分に対する疑念をどのくらい高めそうか、より適切に評価できるだろう。

 これらの理解を通じて、以前なら嘘をついたかもしれない状況で、異なる選択肢を見極めやすくなるだろう。仕事でこうありたいという自分につながり、その「ふり」をしたくなる衝動を抑えるような選択肢を知ろう。

 ●さらに、自分の誠実さを伝える方法を考える

 同僚が、あなたはなぜ嘘をついたのだろうと自問したり、疑ったりしていることをあなたに伝えて、手助けしてくれるとはあまり思えない。むしろ、彼らはすでに、あなたの誠実さを疑っている可能性のほうが高い。

 嘘をきっかけに、あなたの性格のほかの面も疑われる場合もあるだろう。たとえば、自分の貢献を強調したり、間違いを隠したりすると、誠実さだけでなく謙虚さも疑われるだろう。また、嘘をついたことを全面的に認める機会がないかもしれない。多くの会社では社内の政治を考えると、そのような告白はリスクが高すぎる場合も少なくない(あなた自身は何とかして嘘を認め、責任を取りたいと思っているとしても)。

 しかし、人々がいまでは、あなたのことをどのように思っているかを知った後は、それを否定するために、自分の誠実さを伝える方法を学ぼうという気持ちになるだろう。

 たとえば、前述のように謙虚さを疑われている場合、自分のアイデアに自信がないことを正直に打ち明ける、自分が得意ではない事柄を率直に認める、自分より優れた能力を持つ人々を受け入れるといった振る舞いによって、あなたはそれほど悪い人ではないことを周囲が思い出して、まだ誠実さが消えたわけではないとわかってもらえるだろう。

 自分の嘘で窮地に陥っていないことに安心している人も、自分や自分の仕事について事実ではない内容を、周囲が騙されて信じていると思わないこと。今度は嘘を受け入れた人々の認識を覆さないようにしなければならず、そのために嘘を重ねることになるかもしれないのだ。

 この自滅のスパイラルから抜け出そう。

 まず、自分が嘘をつきたくなる状況を自分で理解する。あなたが満たそうとしている正当な欲求は何か、あなたが築こうとしている正当な評判はどのようなものか、正直に考える。その過程で、両方を満たす正当な方法を見つける手がかりを得られるだろう。


HBR.org原文:What to Do When You're Caught in a Lie (Even an Unintentional One), July 12, 2019.

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ロン・カルッチ (Ron Carucci)
米コンサルティング会社ナバレント(Navalent)の共同創設者、マネージングパートナー。組織やリーダー、業界の変革を目指す企業のCEOと幹部を支援する。ベストセラー作家でもあり、著書に最新刊Rising to Power(未訳)など8冊がある。ツイッター(@RonCarucci)でも発信している。Leading Transformationから彼の電子書籍を無料でダウンロードできる。