●自分の価値を「アウトライアー(外れ値)」にする

 すべてのポートフォリオには、投資家の気を引くストーリーがある。あなたのストーリーは何か。そして、それは世のポートフォリオとどう差別化できるのか。

 あなたのスキルセットと経験に具体的で独自性があるほど、ポートフォリオの価値は高まるだろう。銀行規制や太陽光発電の専門家であったり、他のニッチで大変だがやりがいのある分野の専門家であったりすれば、スキルを発揮するよい機会を見つけられるはずだ。

 だが、単に有能で経験豊富なエグゼクティブとして自分を売り込み、ポートフォリオ・キャリアに移行しようとすると、よい仕事に出合うのは難しいかもしれない。

 ●理由を明確にする

 なぜポートフォリオ・キャリアを始めたいのか、そして何を達成したいのかについて、明確なビジョンを持とう。柔軟なワークスタイルで出張を減らしたいのか。社会に貢献したいのか。コーチングやカウンセリング、執筆など、自分が本当にやりたい活動に集中する機会が欲しいのか。明確なビジョンがないと、結局は楽しめなかったり、あるいは本当は望んでもいないポートフォリオ・キャリアになってしまったりしがちである。

 私のクライアントの一人は最近、本人の言葉を借りるなら「よりよいライフスタイル」のためにポートフォリオ・キャリアに「ダウンシフト」した。そんな彼のもとに依頼があったのはコンサルティングの仕事だけで、しかも出張は企業幹部だったときから倍増し、訪れる先も行きたいとも思わない場所ばかりであった。

 まずできる限りよく考え、実践すべきなのは、あなたが目指す具体的な成果は何かを明確にし、その分析結果にふさわしい仕事を積極的に探すことである。妥協するのは、その後でいい。

 ●実際にやってみる前から始める

 社外取締役としてのポートフォリオ・キャリアを考えているのなら、いまから少なくとも数社で社外取締役のポジションに就いておこう。著作家を目指したいのなら、ポートフォリオ・キャリアに踏み切る前に一度出版しておこう。

 その分野で成功した実績がなければ、よい機会を見つけることも、仕事にすることさえも難しいだろう。一方で、我々の顧客の中には、少なくとも3~4年前から計画的に事を進め、大学で講義したり、寄稿したりといった関連活動を通して準備を整えることで、同じ分野でポートフォリオ・キャリアへの移行を成功させた人も少なくない。

 ●社外取締役に期待しすぎない

 社外取締役という仕事はポートフォリオ・キャリアに理想的と感じるかもしれないが、我々の顧客であるエグゼクティブの多くは、取締役をいったん退任してしまえば、そのあとに興味のある会社の取締役になるのは難しいと考えている。組織によっては、社外取締役の仕事は時間を取られ、要求が厳しく、政治的で、リスクが高い可能性もあるだろう。当社の顧客の一人が言う通り、「取締役は他の仕事と同じ」なのだ。

 ●「上昇」ではなく「継続」を考える

 ポートフォリオ・キャリアは、一定のキャリアレベルを継続させるものだ。報酬や地位、名声が上昇することはほとんどない。中小民間企業の社外取締役をいくつか掛け持ちしたところで、気がついたらGEの役員席に座っていたということは、まずない。

 我々が見る限り、賢明なエグゼクティブは、自分のキャリアに完全に満足したときにポートフォリオ・キャリアへと軸足を移す。すなわち、成功と地位の達成に満足し、さらに別の方法でそれを続けたいと望むときである。

 ●スローなビートに合わせよう

 高い集中力を要求され、電話は即折り返しが当たり前、その場での的確な処理、企業の存亡のかかった緊急の決断……何年もの間、そんな企業人生活を送ってきた多くのエグゼクティブは、ポートフォリオ・キャリアのペースが非常に遅いことに驚くものだ。

 コンサルティングを担当するプロジェクトはセールス周期が長い。教鞭を執る大学は、切迫感もなく運営されているように見受けられる。やっと獲得した本の契約も、出版は1年半も先だ。

 生活のリズムが違う。それが悪いのではなく、違うだけだ。あなたがポートフォリオ・キャリアに移行したら、その成功と満足は、この新しい現実にいかにして適応するかにかかっている。新しい環境に沿うよう、自分自身の期待や仕事、時間をうまく調整していこう。

 ●すべての資産を自分で管理する

 企業人としての生活は、ほぼ全面的な貢献が求められ、会社の外での生活とのトレードオフが相当にあった。ポートフォリオ・キャリアでは、同じ轍は踏まないようにしたい。コンサルティングの仕事や締め切りや出張を詰め込んでしまうと、プライベートな人間関係や趣味、健康といった、あなた自身の資産をそれまでと同じようにおざなりにしてしまう。ポートフォリオの価値は、あらゆる資産の価値の総和で決まるということを覚えておこう。

 いつ、どのようにしてポートフォリオ・キャリアに踏み切るべきか、考えているとなかなか勇気が出ないかもしれない。とりわけ、いま成功を収めているプロフェッショナルは、移行によって手放すものの多さを思うと、二の足を踏むことであろう。

 しかし、実際的なアプローチを採用し、他の仕事の目標と同様に先を見越して計画を立てておけば、効果的かつ幸せな、そして思い描く通りの飛躍を遂げられるだろう。


HBR.org原文: How to Launch a Successful Portfolio Career, May 04, 2019.

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マイケル・グリーンスパン(Michael Greenspan)
ビジネス心理学のグローバル企業、 キディ・アンド・パートナー(Kiddy & Partners)のマネージングパートナー。専門はリーダーシップ開発、エグゼクティブコーチング、シニアチーム測定、およびエグゼクティブアセスメント。  CEO、CFO、取締役、シニアリーダーに対して、リーダーシップ、仕事、キャリアに関する助言を行っている。コンタクト先はこちら