●信頼を勝ち取る

 つながりたいというメッセージを送る際に重要なのは、最初に自分が知り合いになるに値する人物であると示すことだ。

 たとえば最近、ある著名な映画監督に連絡を取った際に、私は冒頭で監督と共通する同窓生の名前をいくつか挙げた。監督の作品のミュージカル化について問い合わせたかったので、私が所属するミュージカル・シアター・ワークショップの卒業生たちがつくった有名なショーについても触れた。

 監督は返事をくれて、もう少し詳しく話を聞かせてほしいと言ってくれた。さらに、「このワークショップから刺激的な作品が数多く生まれている」ことを作曲家の友人から聞いたと教えてくれた。最初に信頼を勝ち取ることができれば、あなたとの関係が生産的なものになると考えてもらえるだろう。

 ●価値を提供する

 あなたの憧れの人は基本的に疑い深い(ありとあらゆる類いの要望が寄せられるからだ)。そこで、あなたが有益な人物であることを示す必要がある。

 私はまさに、そのようなメッセージを受け取ったことがある。デンマークで予定されていた講演の1週間前のことだ。「コペンハーゲンは、優れた服飾デザインやインテリアデザインで有名です」と、メッセージの送り主はつづっていた。「私はマーケティングと国際ビジネスの修士号を持つファッションデザイナーで、スタイリストとして14年以上の経験があります」

 彼女は、コペンハーゲンでショッピングの案内役を無料でやりましょうと申し出てくれた。「あなたのウェブサイトで動画を拝見してきました。あなたのファッションスタイルが好きですし、私ならお好みの服をすぐに探し出せると思います」と書き添えられていた。

 講演の場所が米国だったら、同じような申し出(「ダラスで最高のショッピングセンターへお連れします!」)もそれほど魅力的とは感じなかっただろう。コペンハーゲンの街を地元の人と一緒に巡り、土産を買えるという提案は(まもなくクリスマスシーズンだったこともあり)、私の心をつかめるはずだ、と考えた彼女は正しかった。

 結局、彼女と半日以上をともに過ごし、いまでも連絡を取り合う仲になった。相手のニーズと自分のスキルを照らし合わせ、重なる部分に注目すれば、平凡な(そして退屈な)「お茶でもしませんか」といったメッセージをはるかに超えることができ、有意義なつながりをつくることができる。

 ●あなたの興味深い側面を明らかにする(相手の仕事に直接関係しないことでもよい)

 成功者が興味深い人々とのつながりを求めるのは、それが楽しそうだからで、仕事だからではない。しかし、成功者にアプローチする人々はたいてい、要望を持ち込むだけだ。質問をして、知恵を拝借するだけの場合が多いのである。

 そうした依頼を受けるのは、最初のうちこそ自尊心をくすぐられるものの、数が多くなればうんざりしてくる。そこで、相手と対等の、注目すべき人物として自分を位置づけることが有効となる。

 会ったことのなかった私にメールを送ってきたことがきっかけで友人になったある女性は、メッセージを次のような言葉で締めくくっていた。

「少し自己紹介します。私はナショナル・パブリック・ラジオで[テーマ]について話しており、この秋からは[全国放送される番組]に出演します。……最近になって、恐ろしくストレスフルで、そのせいで燃え尽き寸前だった事務職を辞め、本来の仕事である物書きに戻っています。また、毎週公開パレードを行っているニューオーリンズ・スタイルのブラスバンドで演奏もしています。バンドのモットーは、間違った音を出しても気にせず楽しむこと、です」。

 この女性の専門は私とはかけ離れていたが、魅力的な人物だと思ったので、私はすぐに返事を書いた。ジェット戦闘機のパイロットだったとか、100ヵ国を訪れたことがあるとか、アイルランド・ステップダンスのチャンピオンであるといった、あなたの類いまれな側面を伝えれば、記憶に残りやすくなり、つながろうという気を相手に起こさせる可能性が高まる。

 ●何も期待していないことを明確にする

 有名人は要望攻めにあっている。たとえばティム・フェリス(ベストセラー『「週4時間」だけ働く。』の著者)のメール・ニューズレターには、「毎日1000通を超すメッセージを受け取っているので、本人が返事することはできません」という但し書きがある。

 あなたの「売り込み」の文章がどんなによく書けていたとしても、相手がたまたま多忙な時期で、単につながる時間が取れない可能性もある。逆に言えば、相手のそうした状況に共感を示し、それを正面から取り上げれば、ポイントを稼げるはずだ。

 私のニューオーリンズの友人は、次のように書いてきた。「思い切って実行しなければ何も得られません。それから、私は見返りを期待していません。それは私のスタイルではないので。ただ、あなたに連絡を取らずにいられなかっただけです」

 無料のコーチングや重要人物への紹介、自分の仕事のレビューや批評など、知り合いでもないのに不当な依頼をしてくる人があまりに多い。逆に、相手が置かれた状況を承知していると伝え、相手のスケジュールをなるべく乱さないようにしたいと書けば、いい印象を持ってもらえるだろう。

 インターネットのおかげで、ツイートやメールを1本書くだけで、有名人にも容易にメッセージを送れる時代になった。しかし、信頼を勝ち取ることができなかったり(「いったい誰?」)、つながるべき理由を示さずにいきなり依頼をしたりして、そのチャンスを潰している人が多い。

 上記のような戦略を用いれば、相手の目にとまり、自分のネットワークにはこういう人がいると誇れるような人物と、良好なつながりを築ける可能性が高まるだろう。


HBR.org原文:How to Reach Out to Someone Whose Career You Admire, July 17, 2019.

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ドリー・クラーク(Dorie Clark)
マーケティング戦略のコンサルタント、講演家。デューク大学フュークア・スクール・オブ・ビジネスでも教鞭を執る。著書にEntrepreneurial YouReinventing YouStand Out(いずれも未訳)がある。無料の自己診断プログラムRecognized Expertも受けられる。