AIと人間の両方を処理機能として
ワークフローで活用する

 構造化データの処理のみを行うワークフローから人間を除くことは、人間がもはや必要ないという意味ではない。単なる構造化データにとどまらない情報に頼るビジネス上の意思決定事項は数多くある。

 ビジョン・ステートメント、企業戦略、企業の価値観、市場力学――どれも人間の意識にのみ存在し、組織文化やその他の非デジタルなコミュニケーションを通じて伝達される情報だ。これらの情報は、AIにはアクセス不可能であるものの、ビジネスの意思決定にはきわめて強く関連する。

 たとえばAIは、利潤を最大にする適切な在庫レベルを客観的に決定できるかもしれない。しかし、競争の激しい環境では、企業は顧客によりよい体験を提供するために、利潤を犠牲にしても、より高い在庫レベルを選ぶ場合もある。また、企業の資金投資の選択肢において、マーケティングへの投資を増やせば投資利益率(ROI)が最大になる、とAIは判断するかもしれない。だが企業は、品質水準を保つために、緩やかな成長を選ぶ場合もあるだろう。

 戦略、価値観、市況といった形で人間が利用できるさらなる情報により、AIの客観的な合理性に縛られずに済む。前述のようなケースでは、AIは可能な選択肢を生成するのに用いることができ、人間は、みずからがアクセスできる追加的な情報を踏まえ、その選択肢から最善策を選べばよい。

 このようなワークフローの実行の順序は、ケースごとに異なる。AIを最初に用いて人間の仕事量を減らすこともあれば、人間の判断をまずインプットして、それをAIが処理する場合もあるだろう。さらに、AIと人間の間で処理の繰り返しが求められるケースもあるかもしれない。

 ここでのポイントは、人間はデータに直に接するのではなく、AIによるデータ処理で生成された選択肢に接するということだ。組織の価値観や戦略や文化は、人間の意思決定を客観的な合理性と調和させる方法となる。これは明示的に、かつ情報を十分に与える形で行うのが最も望ましい。AIと人間の両方を活用することで、どちらか一方のみを利用するよりも優れた決定を下すことができるのだ。

人間の進化の次なる段階

 データ主導からAI主導へと移行するのが、人間の進化における次の段階だ。AIを私たちのワークフローの中に取り入れることで、構造化データをよりよく処理できるとともに、人間が補完的な形で貢献できるようになる。

 この進化は、個々の組織内で起こる可能性は低い。自然淘汰による進化が個人の中で発生しないのと、まったく同じである。

 それはむしろ、集団全体に生じる淘汰のプロセスである。効率性の高い組織ほど、高い割合で生き残るだろう。成熟した企業が環境の変化に順応するのは困難である。したがって筆者は、今後発展していくのは新たな企業――AIと人間双方による貢献を最初から取り入れ、それを自然に自社のワークフローに組み込む企業――であろうと考えている。


HBR.org原文:What AI-Driven Decision Making Looks Like, July 08, 2019.


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エリック・コルソン(Eric Colson)
スティッチ・フィックスのチーフ・アルゴリズム・オフィサー。前職は、ネットフリックスのデータサイエンスおよびエンジニアリング担当バイスプレジデント。ツイッターは@ericcolson