“90%自動化”で創出したカネとヒトを
新たな成長事業に投資する

――業務改革にデジタルテクノロジーを活用することについて、企業はどのように捉えているのでしょうか。

保科 学世
アクセンチュア
デジタルコンサルティング本部
マネジング・ディレクター
アクセンチュア アプライド・
インテリジェンス日本統括

アナリティクス・AIソリューションの開発を指揮し、多くのサービスを開発。これらのサービス提供責任者も務める。

保科 いまは空前の人手不足ですから、自社のコア業務に集中するには、バックオフィス業務をはじめとする非コア業務をアウトソーシングしたり、効率化する必要があります。それがデジタルテクノロジーを活用すると、単に効率化するのではなく、デジタルでやるべきところはデジタルで、人がやるべきところは人が処理するというように、最適配分が可能となります。

 アクセンチュアには、バックオフィス業務を専門とするAI社員がいますが、AI社員ができることはAI社員が行い、逆に人がサポートすべき細やかな部分は人が行うようにしています。2019年1月にオープンした「アクセンチュア・インテリジェント・オペレーションセンター福岡(AIO福岡)」では、「人間+マシンの協働」によってAIとヒト、それぞれの得意領域を理解した上で、最適な組み合わせで業務を遂行します。ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)、アナリティクス、AIを活用したビジネス・プロセス・リエンジニアリング(BPR)、我々はそれを「インテリジェント・オペレーション」と呼んでいるのですが、これによって人の働き方は大きく変わるのではないでしょうか。

伊佐治 光男
アクセンチュア 執行役員
オペレーションズ本部 統括本部長

「人間とマシンの協働」をテーマに、業務アウトソーシング(BPO)との組み合わせによるBOT型のデジタル業務改革を担当。

伊佐治 インテリジェント・オペレーションの実現には、「人間+マシンの協働」を土台に、「デジタル技術の組合せ活用」および「ゼロベース業務改革と定量的管理」が必要です。これにより、「現行業務の超自動化」「データ活用による業務の高付加価値化」「企業全域での業務目的貢献」を達成していくのが、インテリジェント・オペレーションの基本コンセプトとなっています。

 リソース制約の下で業務を高付加価値化していくには、前提として自動化を徹底して行う必要があります。多くの企業の現行業務は、3年あれば半減させられると我々は思っています。逆に言えば、インテリジェント・オペレーションへのデジタル業務改革は突然のビッグバンではなく、複数年にわたる小刻みで連続的な改革群のジャーニーとして捉えることが重要です。AIO福岡では、業務アウトソーシング(BPO)との組合せによるBOT型のデジタル業務改革を実践しており、業務担当者と業務改革者の両方を弊社の社員が担うことでリスキリング問題・意識改革問題をクリアしつつ、究極的には現行業務の“90%自動化”を目指しています。

出所:アクセンチュア

――AIO福岡にアウトソースすることで大幅な効率化と高付加価値化が達成できれば、ワイズ・ピボットの原資も生まれ、「新規事業のスケールアップ」も実現できそうですね。先ほど山形さんは経営者の多くが自社の業務内容をすべては把握していないとおっしゃっていました。それでも、ワイズ・ピボットを成功させることができるのでしょうか。

牧岡 経営者がとりうるアプローチは2つで、一つは、増殖する業務を全部ファウンダー的にマイクロマネージすることに注力する。もう一つは、思い切り業務のAI化や外部化を行い、人的余力やキャッシュを生み出す。思い切り、と言っている通り、中途半端なBPRやBPOではだめです。その意味で、我々の提供する「インテリジェント・オペレーション」は極めて意味があると思っています。

 更に大切なのは、「新規事業のスケールアップ」をどうするか。経営者として創出した人的余力やキャッシュを活用し、どんな新規事業に注力するか、がないといけません。

保科 ちなみに、このときに重要となるのがゴール設定ですが、これは人間の経営者がやらねばならない仕事の一つですね。今の世の中の社会課題は何か、顧客体験とはどうあるべきか、といったこと。これは機械には難しい作業です。

 ゴールを設定したら、今度は新しい技術やプロセスでそのゴールを見据えて業務を組み立て直します。単に古いプロセスを自動化するのではなく、新しいプロセスやビジネスモデルをゼロからつくり上げる行為を規範として根付かせ、新しいやり方で実践することが非常に重要となります。

伊佐治 まさに、基本的な考え方として、我々は“執行(Execution)”が大事だと思っています。高付加価値化というのは、決して企画・分析能力や戦略能力が高くなった時点で達成されるわけではありません。先ほどご紹介した支払業務の例のように、現場での日々の執行があって、初めて高付加価値化が現実のものになるのです。日々の執行、日々の業務担当者の動きが変わることが重要です。