●「一緒にいる」感覚をつくる

 困難な会話であるほど、利用するシステムを慎重に選び、できる限りシームレスに話ができるようにしたい。コプレゼンス(共在感覚、人と効果的な接触が図れると感じられること)をつくり出そう。

 たとえば、インターネット回線の品質が万全でない場合には、映像(TV会議)は諦めて、音声のみの電話会議を検討してもよいだろう。また、邪魔が入らないように環境を整え、互いが会話そのものに集中できるように配慮しよう。オープンスペースのオフィスで行う場合には、これが特に重要だ。

 ●可能なら、アイコンタクトを取る

 心情的に話しにくい内容を話すとき--特に悪い知らせを伝えるとき--には、相手とアイコンタクトを取り、相手を思いやるようにして情報を伝えるのがベストだ。バーチャルな環境では、顔の表情や声の調子で自分の姿勢をわかってもらうのは難しい。直接会って話せない場合は、なるべくTV会議やスカイプを利用しよう。

 ●具体的に話す

 バーチャルな会話には、2種類の「距離」が付き物だ。1つは物理的な距離。2つめは、会話者同士がつながろうとして壁にぶつかることで増す、互いの距離感だ。

 解釈レベル理論に関する研究では、対象(者)と社会的または時空間的に離れるほど、その物や人を抽象的に考える傾向があることが指摘されている。しかし、難しい会話には、抽象的ではなく具体的なフィードバックを与えなければならない場合が多い。特に社員のパフォーマンス上の問題を指摘するときなどには、問題だと判断した言動の事例や、問題を解消するためのアクションを具体的に示すことが必要だ。

 距離の呪縛を意識して乗り越え、論点をできる限り具体化しよう。話す前にメモを準備し、重要なポイントを強力に裏づける、具体的事例を話せるようにしておくとよい。それをやらないと、せっかく話しても、相手はあなたが気づいた問題に対処しようと思わない可能性がある。

 難しい話は、どんなに環境を整えても成功裡に終わらせることは難しい。もしどうしてもバーチャルな環境で話さなければならないのなら、いつもより少しだけ入念に準備をしよう。その少しの準備で、同じ時間に同じ場所で話しているような感覚に、大きく近づくことができるはずだ。


HBR.org原文:How to Have Difficult Conversations Virtually, July 08, 2019.

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アート・マークマン(Art Markman)
テキサス大学オースティン校のアナベル・イリオン・ウォーシャム生誕100周年記念講座教授。心理学とマーケティング論を担当。また、同校ヒューマン・ディメンションズ・オブ・オーガニゼーションズ教育プログラムの創設ディレクターでもある。論理的思考、意思決定、モチベーションなどをテーマに、150以上の学術論文を執筆。最新刊は、Bring Your Brain to Work (未訳)。