●「親近感バイアス」の存在を認める

 会社の多様性推進委員会の委員長でも、マイノリティグループ出身者でも、仕事上の決断、とりわけ採用決定に影響を与えるバイアスを持っているものだ。

 なかでも「親近感バイアス(affinity bias)」―自分に似ている人を好意的に評価すること―は、最もよくあるバイアスの1つである。これが採用に影響を与えると、自分と同じ人種、性別、出身校、言語の候補者を紹介したり選んだりすることにつながる。「自分の若い頃を思い出す」といった感情も、親近感バイアスの1つだ。

 マイクロソフトのグローバル採用責任者チャック・エドワードによると、親近感バイアスは採用活動で幅広く存在し、「見た目も、行動も、働き方も」自分と似た人物を探し、採用することにつながるという。エドワード自身も、その罠にはまったことがあるそうだ。「だから、この問題に非常に慎重に取り組んできた」

 ●学習リストをつくる

 マイノリティグループの職場経験が書かれた文献を読み、学ぼう。

 筆者のお勧めは、イジェオマ・オルオ著So You Want to Talk About Race(未訳)、ロビン・ディアンジェロ著White Fragility(未訳)、そしてイリス・ボネット著『WORK DESIGN(ワークデザイン)』だ。ちなみに『WORK DESIGN』を筆者に勧めてくれたのは、アクセンチュアのマネージングディレクターで、北米インクルージョン・アンド・ダイバーシティをリードするミシェル・ガズデン=ウィリアムズである。ハーバード・ビジネス・レビューのポッドキャスト「ウィメン・アット・ワーク」も素晴らしいリソースだ。

 通常は目にしないようなリソースを探し、マイノリティ・コミュニティに関する文献を探そう。米国の場合、移民や障がい者、米国先住民の視点が描かれた書籍が含まれるだろう。

 それは採用決定に影響を与えるバイアスを明らかにするとともに、会社のプロセスに潜むバイアスに気づき、場合によっては指摘するための枠組みや表現を教えてくれるだろう。

 ●「このバイアスは採用決定のどの段階で表れるのか」を問う

 ある組織に、「こいつを雇うべきだ。こいつなら仕事の後に一緒にビールを飲んでいる姿を容易に想像できる」とか「この人物は、経歴は十分だが、文化的に合わない」といったことをよく口にする採用責任者がいた。

 だが、こうした無意識のバイアスだらけのコメントは、放置されがちである。

 筆者は以前、白人男性しかいないリーダーシップチームから、採用活動からバイアスを取り除くためのガイドラインづくりを手伝ってほしいと頼まれたことがある。そこで、採用面接後の担当者ミーティングで、「今日の私たちの決断で、無意識のバイアスが表れた場面はどこか」と、質問してみてはどうかと提案した。この介入措置と他の改革のおかげで、そのチームは2人の女性リーダーを新たに採用することになった。

 誰もが無意識のバイアスを抱えていることをはっきり認め、それを指摘する場をつくると、お互いの説明責任を問うチャンスが生まれる。

 ●同僚の意見に影響されないようにする

 マイクロソフトではかつて、採用候補者に関する評価を、採用チームで共有できるようになっていた。「面接担当者は自分の順番がくる前に、すでに面接を終えた担当者の評価を見ることができた」と、エドワードは言う。「それがバイアスを生み、面接担当者の評価に影響を与えていたことは明白だった」

 マイクロソフトは最近、システムを変更して、自分の面接が終わらなければ、他の面接担当者の評価を見られないようにした。エドワードによると、これにより面接担当者は、同僚や上司の意見に影響されずに、自由に候補者を評価できるようになったという。

 マイクロソフトのように採用プロセスにソフトウエアを使っていない場合でも、候補者について自分の評価を確立するまで、他の面接官の評価を見聞きすべきではない。

 まず、自分の評価と採用の是非に関する意見を書面にまとめるといい。同僚と意見を交換するのはそれからだ。また、書面を作成するときは、先ほど言及した「自分のバイアスが、評価や推薦のどの部分に影響を与えているか」を考えながら行うべきである。

 ●「立場置き換えテスト」でバイアスを発見する

 フォーチュン500企業のエグゼクティブであるクリステン・プレスナーは、2017年の勇気あるTEDxトークで、みずからも女性だが、女性リーダーに対してジェンダーバイアスを抱いていることを認めた。そして、バイアスを破壊する方法を明らかにした。すなわち、マイノリティ出身者を典型的な採用者に置き換えてみて、その言動や経歴に対して自分が同じ反応を示すかどうかを考えてみるのだ。

 たとえば、非白人女性の採用候補者が情熱的に話をするのを見て、あなたは彼女が怒っていると感じて、採用に消極的になったとする。そのとき、もしその非白人女性が白人男性だったら、やはり自分は同じように感じるだろうかと考えてみるのだ。そうすることで、自分が持つバイアスをあぶりだし、破壊しようというわけである。

 プレスナーが提唱した方法は、「Flip it to test it(ひっくり返して調べろ)」と呼ばれ、比較的簡単にバイアスを発見することができる。最近、筆者が関わった事例を紹介しよう。

 極めて高い資質を持つ非白人女性が、すでに非公式に、その仕事をこなしている役職に正式に応募するようアプローチを受けた。その組織はその時点で彼女の仕事ぶりをよく知っているから、人事部長は採用プロセスの初期段階を省略しても問題ないと考えた。ところが人事部の一部は、彼女のために「ルールを曲げる」ことに懸念を示した。

 そこで筆者は、2つの質問をした。「もしこれが白人候補者だったら、伝統的な採用プロセスを一部省略することに躊躇を感じただろうか」「これまで採用候補者が全員白人男性だったとき、採用プロセスの公平性を幅広く重視しただろうか」

 採用委員会は、どちらの問いにも全員一致で「ノー」と答えた。こうして彼らはバイアスを明らかにし、その候補者に昇進オファーを出した。

 ●バイアスが減ると個人にとってもプラスになることを理解する

 職場に多様性があると、その組織はより賢く、より独創的になり、より批判的思考ができるようになる。組織だけではない。多様なバックグラウンドの人と働くことは、個人にとってもプラスになる。バイアスを減らすと自分にとってプラスになることがわかれば、バイアスを減らすモチベーションがもっと高まる可能性が高い。

 アクセンチュアのガズデン=ウィリアムズはこう言っていた。「平等の文化は乗数だ。(だが)まず無意識のバイアスを取り除かなければ、平等の文化を構築することはできない」


HBR.org原文:How to Reduce Personal Bias When Hiring, June 28, 2019.

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ルチカ・トゥルシャン(Ruchika Tulshyan)
インクルージョンを専門とするコンサルティング会社キャンダー(Candour)創業者。シアトル大学非常勤講師。著書にThe Diversity Advantage(未訳)がある。