障害者向け福祉サービスを展開するウェルビーの大田誠社長がこのほど、ハーバード・ビジネス・スクール日本同窓会主催の「2018年起業家大賞」を受賞した[注]。2011年に設立し、障害者の就労支援サービスを核にしたビジネスモデルで、なぜ売上高57.5億円、営業利益率26.0%(2019年3月期)の急成長を果たせたのか。大田社長に聞いた。(聞き手:小島健志・DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部副編集長、構成:加藤年男)。

法定雇用率アップで
進む精神障害者の採用

――障害者向けの就労支援ビジネスについてお教えください。

 障害者の法定雇用率が2018年4月に、2.0%から2.2%に引き上げられました。2021年4月までに、さらに0.1%の引き上げが予定されているため、民間企業の障害者採用の意欲が高まっています。

大田 誠
ウェルビー代表取締役社長
1972年生まれ。1996年に中央大学商学部卒業後、武蔵野銀行などを経て2004年、バイオベンチャーのテラに入社。取締役副社長として新規株式公開(IPO)に携わった。2011年にウェルビーを創業し、現職。2017年に東証マザーズ上場を果たす。
Photo:Takeshi Kojima

 ですが、就労可能な身体障害や知的障害の人はすでに仕事を持たれている場合が多く、応募者が少ないのが現状です。そのため、民間企業は今後、精神障害や発達障害の方の雇用を進めなければなりません。

 誤解の多い点ですが、いまは医療が進歩し、精神障害にも有効な薬が多く出ています。医師の指示の下、継続して薬を飲んでいれば、精神障害のある方であっても普通の生活が送れます。

 ただ、そうした方が就職したくても急にはできませんし、突然新しい環境に置かれては精神的な不安定さが生じてしまう。そうならないよう就労に向けて慣らしていくのが私たち就労移行支援事業所の役割です。

 現在、全国に67拠点(2019年3月時点)を構えています。各地に置いた事業所に通ってもらうことで、社会復帰の道を探ります。利用者の方は、発達障害や精神障害を抱えている方がほとんどで、統合失調症の方もたくさんいます。実際に就職した人の内訳では、うつ病が22%、発達障害21%、統合失調症が18%です。

――従来、障害者支援といえば非営利組織である社会福祉法人やNPO団体が中心でした。

 社会福祉法人やNPOによる支援は、場所が郊外にあったり、企業社会に疎い方々が運営していたりしたことから、就職になかなか結びつかなかったという課題がありました。そうした状況を政府が問題視して、民間への開放を進めました。たとえば、私たちは通いやすい中心市街地に事業所を置いています。職種も主に一般企業の事務職を目指し、ビジネススキルの習得を行っています。実際、就職先は事務職が60%を占めています。

「一億総活躍時代」といわれるなか、政府も本当に自立して活躍する人たちを増やすため、私たちのような民間の必要性を認めています。就労移行支援事業所を利用して就職する人の数を、2020年度までに2016年度実績の1.5倍にすると掲げています。

【注記】
 ハーバード・ビジネス・スクール日本同窓会(正式名称Harvard Business School Club of Japan)は、同校の卒業生や修了生を中心とした組織。運営はExecutive Committee(現在28名の理事で構成)が行い、2001年から毎年、Entrepreneur of the Yearと称して、社会に変革をもたらした起業家を表彰している(2017年は該当なし)。
 森俊雅副会長によると、大田誠・ウェルビー社長の受賞理由は「1人でも多くの障害者に成長と活躍の場を創出したいという熱い思いを胸に、障害者に幼少期から寄り添い、就職を支援し、職場への定着率を向上する仕組みを考案し、継続的成長が見込める事業体をゼロから立ち上げ、社会変革の一翼を担う企業にまで発展させたこと」にあるという。