それまで完璧を目指して練習を重ねてきたタスクで、ストレスフルな状況に突入しそうになったら、まずは、これからやることについて考えすぎないことだ。大舞台の5分前は、タスクの詳細を頭の中で反芻するときではない。何かほかのことに意識を向けよう。

 クロスワードパズルをしてもいいし、計画中の旅行のことを考えるのもいい。私が密かに楽しんでいるのは、ゴシップ誌『ピープル』のオンライン版で最新のセレブ情報をチェックすることだ。とにかく、これからやるタスクについて、考えすぎないようにしてくれることを見つけよう。

 すでに考えすぎが始まっている、という場合は、歌を歌ったり、おまじないの言葉を唱えたり、聴衆に伝えたいキーポイントを3つだけ考えるようにしよう。すると、認知能力が自分にマイナスに働き始める前に、横取りすることができる。私の研究では、この手法を駆使した結果、パットの決まる数が増えた著名ゴルファーがいた。

 たとえば、あなたが採用面接の準備をしているとしよう。あなたは自分の経歴を知り尽くしているから、通常なら、自分の長所や実績をすらすら言うことができる。ところが面接官を前にすると、凍りついてしまう。事前に無関係な活動のために前頭前野を働かせておけば、肝心なときに考えすぎてしまう可能性は低下して、より効果的に自分のメッセージを伝えられるだろう。

 大事なイベントの前に、手に汗をかいたり、心臓がドキドキしたりするのは、いいサインだということも、覚えておくといいだろう。こうした身体症状は目の前のチャレンジに取り組む準備ができている証拠だ。研究によると、この種の身体反応をネガティブなものではなく、ポジティブなものだと認識を改めると、ここぞというときにスムーズな動きができる

 もちろん、面接中に歌い出すわけにはいかないし、重要な会議やプレゼンで目の前に座っている上司に、おまじないの言葉を一緒に唱えてくれと頼むわけにはいかない。こうした状況では、もっと目立たないように前頭前野を忙しくする方法がある。

 たとえば、自分が伝えたい最も重要なポイントに意識を集中すること。もし自分の口から出てくる言葉一つひとつが気になるようになったら、足の小指を思い浮かべてみよう。これはゴルフの帝王ジャック・ニクラウスが、簡単なパットを沈めるとき考えすぎないようにするために使っていたテクニックだと、あるスポーツ心理学者が教えてくれた。

 ただし、こうしたテクニックが効果を発揮するのは、事前に十分な準備をしている場合に限られる。プレゼンの準備をまともにしていなければ、本番直前にどんなに考えすぎないよう工夫しても意味はない。

 本番と似たような条件下で、繰り返し練習することも極めて重要だ。たとえば、専門能力のテストを受ける場合は、模擬試験が「本番そっくり」の状況で練習する最善の方法になる。自宅で問題を解く練習をするときは、時間を測ることで、本番に似た状況を作ることができるだろう。

 プレゼンや面接など、相手がいる状況で自分の力を発揮する必要があるときは、職場の同僚たちに予行演習を手伝ってもらうといいだろう。誰もいなければ、自分のプレゼンや返答を録画(または録音)して、鏡の前で繰り返し練習するといい。リハーサルをしておけば、本番で感じるストレスを軽減できるだろう。

 そして万が一うまくいなかったら、覚えておいてほしい。それで世界が終わるわけではない。落胆して、恥ずかしいとさえ思うかもしれないけれど、何でもそうであるように、それも学習経験だ。それを機に、次はもっとうまくストレスに対処できる方法を学べばいいのだ。


HBR.org原文:Why Talented People Fail Under Pressure, June 27, 2019.

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シアン・バイロック (Sian Beilock)
バーナード・カレッジ学長、認知科学者。著書に、『なぜ本番でしくじるのか』『「首から下」で考えなさい』などがある。