プラットフォーム企業が
自社製品を提供する理由

 アップルはなぜ、サードパーティに頼らずに、自社製のアプリを製造するのだろうか。アマゾンはなぜ、すでにサードパーティがマーケットプレイス上で販売している商品を、みずから販売しようとするのだろうか。グーグルはなぜ、みずからレストランのレビューを提供するのだろうか。ツイッターはなぜ、リアルタイムの動画ストリーミング・サービスであるペリスコープを買収したのだろうか。

 こうした各ケースで問題とされる製品は、プラットフォームを補完するものであった。その存在が、プラットフォームの価値を高めるものであった。

 教科書的な説明をするならば、プラットフォームの所有者がこうした製品をみずから提供する理由は、これらの補完商品が「卵が先か、鶏が先か」問題の解決を助けるからだということになる。すなわち、プラットフォームの基盤となる既存ユーザーがいなければ、サードパーティはプラットフォームを補完するような製品をつくろうとはしないし、補完商品がなければ、プラットフォームを使おうと関心を示すユーザーは生まれないだろう。

 ただし、この説明には、前述のケースには当てはまらない点が多々ある。というのも、前述のケースでは、プラットフォームがすでに軌道に乗っているからだ。

 複数の研究により、プラットフォーム所有者が参入する動機について、価値の獲得以外にもいくつか特定されている。

 これらの研究の指摘によれば、プラットフォーム企業は、質の向上を目的として直々に参入することを選ぶという。たとえばアップルは、画面を見ている時間を監視したければ、自社のほうが質の高い仕事ができると考えたかもしれない。

 私の共著の論文では、グーグルが自社製の懐中電灯アプリを導入したタイミングに着目した。

 サードパーティの懐中電灯アプリに対して、プライバシーを脅かす不安をユーザーが感じていたことが影響していた可能性があるのだ。加えて、数百もの懐中電灯アプリがすでに開発され、今後さらに多くの開発が予想されることを踏まえると、グーグルの参入は、重複する機能を開発する無駄な努力を抑制したものとも考えられる。中国最大のeコマース企業の一つであるJD(京東商城)に関する私の共著ケーススタディでは、同社があるカテゴリーで自社製品を提供すると決めたのは、偽造品を減らすためだったことが明らかになった。

 プラットフォーム企業の参入は、サードパーティにマイナスのシグナルを送る。プラットフォーム企業が参入する頻度が高ければ高いほど、サードパーティが、プラットフォームの補完製品を提供するインセンティブは小さくなるだろう。事実、プラットフォーム企業によっては、補完製品を提供するサードパーティが利益を上げられると確信できるように、熱心に働きかけているところもある。

 インテルのマイクロプロセッサーは、メモリースティックやネットワークカード、サウンドカードなど、サードパーティによるさまざまなハードウェア装置の構築を可能とするプラットフォームとしての役目を果たしている。そこでインテルは、自社の製品ラインの多くでサードパーティと直接競合するのを避け、サードパーティが確実にプラットフォームへの投資を続けて、インテルのプラットフォームの価値を創出するよう仕向けた。

 だが、この公式は、サードパーティが特定のプラットフォームへの投資を行わない場合には成立しない。インテルのマイクロプロセッサー上で稼働する装置を製造するにはコストがかかるため、サードパーティはその後、インテルが参入しないという確信がない限り、投資を行わなかった。

 これとは対照的に、アマゾンに製品を掲載するにはたいして費用がかからないため、サードパーティの売り手は、多少リスクがあろうとも参加する可能性がはるかに高い。つまり、アマゾンが直々に参入しても、サードパーティの意欲をくじくのではないかと心配する必要はさほどないと思われる。