アイデンティティの統合を支援するには

 社員のアイデンティティの統合を支援する具体的な方法を、いくつか伝授しよう。

 ●ある程度自主性に任せる

 仕事のやり方を自分なりに工夫できるようにすると、社員の「自分らしくある(オーセンティシティ)」という意識を強める大きな助けになる。この「ジョブ・クラフティング(仕事を創ること)」の範囲には、業務内容や人との関わり方(メンタリングやミーティングなど)、さらには自分の役割に対する社員自身の認識も含めるとよいだろう。

 ●自社の使命や理念を有言実行する

 組織の使命や理念は、壁にポスターを貼ったり、アニュアルレポートに書いたりするだけでなく、社員にはっきりと伝えよう。そうすれば社員は、それと自分の行動とを結びつけやすくなる。

 有言実行するということは、実行中の内容を社内で共有する、体現している社員を評価する、そして理念に共感するサプライヤーや取引先とつき合うということだ。企業がその使命や理念に反したときは、社員にもわかる。そのため、そうしたことがあからさまに、あるいは密かに起こっていないか(互いを尊重し合うことを規範にしているのに、社員と上司の足の引っ張り合いを黙認しているなど)を注視しよう。

 ●プロセスと方針の透明性を高める

 上記に関連するが、採用、昇進、サプライチェーンなど、何に関しても、会社としてどのように行っているのかを全社員に明らかにすることだ。透明性に関する企業方針の表明と、それを裏打ちする行動は、社員が大切にして必要とする、オーセンティシティの重要な部分である。

 ●強制しない

 オーセンティシティに対するニーズを、何でもかんでも満たそうとしないこと。年配層をはじめ、アイデンティ統合を強く意識している社員ばかりではないからだ。そのため、使命や理念の促進に努めるのはよいが、いつもありのままの自分を出すことを強要しないほうがよい。

 たとえば、チームづくりのエクササイズは、頻繁に行うほど効果が上がるものでもない。社員のニーズは一括りにはできないことを理解し、できる限り個別に把握し、対処する努力をしよう。

 社員に自分らしく正直に働いてもらうことの重要性を認識し、そうしたオーセンティックな職場づくりに積極的に取り組めば、社員が倫理に反する行為を犯すリスクの軽減にもつながることを覚えておきたい。要するに、社員のアイデンティティ統合ニーズを満たすことは、全社にわたりモラルの徹底を図りたい企業ニーズに応えることでもあるのだ。


HBR.org原文:Why Authentic Workplaces Are More Ethical, June 19, 2019.

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マリアム・クーシャキ(Maryam Kouchaki)
ノースウェスタン大学 ケロッグスクール・オブ・マネジメント助教授。経営組織論、特に意思決定と倫理を研究している。